・・・

ジョージ

うぅぅ・・・

カオリの瞳は冷たく
どこか悲しみを宿していて
ジョージは思わず吸い込まれるように
見つめてしまった。



理性が曇り、血の気が急速に
引いていくような不気味な感覚が、
背筋を冷たく駆け抜ける。



ジョージは本能的に危機を感じ
その圧迫感をなんとか振り払おうとした。

ジョージ

わ、わかった!わかったから…
こっちに来るな

ワトリーは後ろからカオリを優しく抱きしめ
静かに言った。

カオリ、もうやめてほしいのだ。君は“蛇女”なんかじゃない。
カオリなのだ、僕たちの仲間なのだ

ワトリー・・・




カオリの脳裏に、あの日の記憶が蘇っていた。


サーカス団の暗がりの中、
仮面の下に潜む彼女を、
怖がることなく笑顔で迎えてくれたワトリー。


あの小さな探偵は、
恐れを知らず彼女の傍に寄り添い
絵本を広げて一緒に物語の世界を旅し
ひとつひとつの言葉を教えてくれた。

そして、最後には「君は友達だよ」と
カオリの手を優しく握ってくれた。

カオリにとって、
その言葉は何よりも特別なものだった。

彼女を「怪物」ではなく「友」として
見てくれるワトリーに
何かしないではいられなかったのだ。


あのサーカス団はもうない
だから
カオリが傷つく必要はないのだ

ワトリーの言葉にカオリは静かにうなずき、
仮面をゆっくりとつけ直した。

顔を上げた彼女は、
冷たく鋭い視線をジョージに向ける。

カオリ

・・・

さあ、全部話してもらいます!!

店内の客は一斉に帰らされ、
ジョージとその仲間、
そしてワトリー達だけが残された。

店の奥では、数人の店員たちがちらちらと
こちらを見ながら掃除を始めていた。

薄暗い店内で流れる音楽は、
緊張感を増幅させるかのように
不気味に響いていた。

ワトリー

ジョージ、他にシオンを狙ってる猫がいるなら教えてほしいのだ

ジョージ

・・・シオンに子供がいるのを知ってるか?

ワトリー

知ってるのだ

ジョージ

実は、子供を誘拐してくれって
頼んできたやつがいるんだよ

誘拐だって!!いったい誰が?

ジョージ

・・・リックの兄貴だ

ポテト

兄貴?リックの調書にはそんなこと書いてなかったけど

ジョージ

さぁ、それが本当かどうかはわからないが
その兄貴は、リックが死んだあの日、シオンがリックの部屋から
ドラッグを盗んでいるところを見ているんだ

ワトリー

じゃあ、そのドラッグを探して
シオンを狙った?

ジョージ

シオンがリックを殺したとも
言っていた。かなり恨んでいるんじゃないか

ジョージ

それに、シオンの家にも入って
ドラッグを探したらしいが見つからないから
今度は子供を誘拐するよう言われた

人気のアイドルがドラッグや子供がいたとなれば、
世間からどんなバッシングを受けるか…

ワトリー

その猫の名前は?

ジョージ

ジャックだ

ポテト

それはこの猫ですか?

ルーカスのが映っている
防犯カメラの映像を見せた

ジョージ

うーん。見たことはあるような・・・
ジャックとは直接会ったことがないんだ

ジョージ

リックの兄貴だといって、電話で指示を出してきた

ジョージ

協力したら大金が手に入るって
言われて、手付金も振り込まれた

ワトリー

ジョージはシオンの子供を
連れさろうとしたのだ?

ジョージ

おれたちが施設に行ったころには、もういなかった

ワトリー

エイミーが連れて逃げたのだ…
子どもを守るために

ジョージ

おれたちが知ってるのは
それだけだ

ワトリー

ジョージ、ジャックとは連絡が取れるのか?

ジョージ

ああ、子供を誘拐したら連絡するように言われている

ワトリー

ジャックに連絡をとって、子供を誘拐したと言ってほしいのだ

え、子供はエイミーが保護してるんじゃないの?

ワトリー

おびき出すのだ。きっと、
ドラッグのありかを子供が知っていると思っているのだ。

ワトリー

シオンは金庫の暗証番号やロッカーのカギを渡している可能性があるのだ

そうか、シオンのバッグがあさられていたり、空き巣が入ったのは、何かを探していたからなんだ!

ジョージ

わかった、やってみよう。

ジョージは電話をかけた

・・・はい

ジョージ

ああ、俺だ。言われた通り、
シオンの子供を誘拐したぞ

そうか、少しの間預かっていてくれ

ジョージ

ああ、わかった。でも
ガキを誘拐していったい何がしたいんだ?

そのうちわかる。

ジョージ

金の約束を忘れるなよ

もちろんだ

ジョージ

じゃあな

ちょっと待て、
シオンの子供はオスかメスか?

ジョージ

えっと・・・

そこにいるんだろ?

ジョージは一瞬、焦りを感じ
ポテトを見つめた。

ワトリーど、どうしよう

ワトリー

オスなのだ

ジョージ

オスだ

わかった

電話が切れた

ジョージ

……バレてないよな?

ワトリー

大丈夫なのだ。これでジャックが動くはずなのだ

ワトリー

動きがあったら教えてほしいのだ

ジョージ

わかった

ジョージ

おれが言うのもなんだけどさ
ワトリー、根性あるな。
探偵なのに直球すぎるだろ

ワトリー

へへ、もうああするしかなかったのだ

ジョージ

がんばれよ
協力するぜ

ワトリー

うん!ありがとうなのだジョージ



三匹が外に出ると
朝の光が街をまぶしく照らし始めていた。

ポテト

ワトリー、どうしてシオンの
子供がオスだってわかったの?

ワトリー

シオンの楽屋にクラシックのミニカーが置いてあったのは、
子供がミニカーが好きで渡しているからだと思ったのだ

ワトリー

ミニカーは特にオスの子供が好きなのだ。ボクも子供の頃、ミニカーが大好きだったのだ

ポテト

なるほどボクは今も好きだけどね

そうしてジャックの電話番号を入手した

三匹は新たな覚悟を胸に
朝日の差し込む街へと歩みを進めた。

つづく