一方会場では

イベントが中止され、スタッフたちは
撤去作業に追われていた。

来場した客をすべて帰らせるまで、
サリーたちは会場に残り、待機している。

サリーは一匹、楽屋の鏡をじっと見つめ、
静かにため息をついた。

サリー

シオン…

そう呟きながらシオンから貰った
クラシックミニカーを握りしめた

その時、メイク担当のイザベラがそっと入ってきた。

イザベラは優しくサリーの髪を整えながら
穏やかに言った。

イザベラ

大丈夫よ、サリー。あなたなら
きっとシオン以上に人気が出るわ

サリー

でも、私もシオンと同じ店で働いてた…次は、私かもしれないわ

イザベラ

どうしてサリーが狙われるの?
ストーカーは
シオンのお客だったバーナードなんでしょう?

サリー

うん…たぶんそうだと
思うんだけど…

イザベラ

何か心配なことがあるのね。
大丈夫、
私はサリーの味方だから。
何でも言って

サリー

イザベラ、ありがとう…

しかし、サリーの心には
一つの疑念が渦巻いていた。

楽屋には関係者以外は立ち入れないはず。

それなのに、
あの羽は一体どうやってシオンに
渡されたのだろう?







そのころ、ジョセフは一旦署に戻っていたが、
ふと思い出した。

サリーのサインをもらい忘れていたのだ

ジョセフ

よし、一旦戻るか

シオンが亡くなり、

グループのナンバー2であるサリーが
センターになるのはほぼ確実。

この機会にサインを手に入れ、
さらに落ち込んでいる
サリーを励まして良いところを
見せようという少し不純な下心を抱え
再び会場へと向かった。







会場ではまだ撤収作業が行われており
多くのスタッフが忙しそうに動き回っていた。

ジョセフは楽屋に続く廊下を歩いていると
アイドルグループの別のメンバーと鉢合わせた。




あの、シオンを殺した犯猫は
分かったんですか?

ジョセフ

いや、まだ捜査中だが

そうですか…でも、これで
センターが変わるのね

そう言った彼女の表情には
どこか嬉しそうな影が見えた。

ジョセフ

まるでセンターが変わってほしいみたいな言い方だな

そ、そんなことないですよ!

ジョセフ

つかぬことを聞くが、イザベラとシオンの間柄はどういうものだったんだ?

どういうって…メイクさんと
アイドルの普通の関係ですけど…

ジョセフ

イザベラがシオンの噂を流しているのは知っている。
どうしてそんなことをしていたんだ?

えっ、それは…知りませんよ

彼女の目が泳いでいるのが分かった。

ジョセフ

警察に協力できないなら署で
話を聞いてもいいんだがな

え、えっと…

実は…イザベラはナンバー2の
サリー派なんです

ジョセフ

サリー派?派閥があるのか?

そう。噂では、イザベラは裏で
賭けをしていて、サリーが
センターになる方に賭けているらしいんです

それで、シオンの悪い噂を流したり、嫌がらせをしていたみたいで…

ジョセフ

ということは、シオンを脅していたということか?

脅していたのかどうかは
分かりません

ジョセフ

うーん、そうなるとストーカーの件も怪しいな。もしかすると
イザベラが仕組んだ可能性がある…

私はそれ以上は知りません!

メンバーは急に慌てたように言うと
足早にその場を去った。






ジョセフは一息ついてからサリーの楽屋を訪ねた。
そこにはサリーと、イザベラがいた。

イザベラ

こんにちは

サリー

ジョセフさん・・・

サリー
シオンがいなくなって
寂しいだろうが、
これからは君の時代だ!

君がこのグループを引っ張っていけば、さらに大きく羽ばたけるさ!

サリー

今はそんなことを考えられません…

そんなこと言わずに。
君にはその素質があるんだよ!
ねえ、イザベラ?

イザベラ

そ、そうね。ジョセフさんの言う通りよ。あなたの活躍を
亡くなったシオンもきっと
応援しているわ

ジョセフ

そう、ナンバー2からの
逆転劇は、さぞ儲かったでしょうな

イザベラ

な、なによその言い方は!

サリー

儲かる?

シオンを脅して怯えさせることで、活動を自粛させたかったんじゃないか?

イザベラ

あなた失礼よ!何を言ってるの!

ジョセフ

いや、こちらの話です。
気にしないで

ジョセフ

あ、そうだサリー
サインをくれないか?

サリー

え、ええ…

イザベラ

サリーまた後でね。

サリー

うん

イザベラは居心地が悪そうに楽屋を出て行った。

その背中を見送りながら、

ジョセフは静かにため息をついた。

ジョセフ

さて、次はもう少し核心に迫らないとな…

ジョセフ

サリー、イザベラのことはどう思う?

ジョセフは無駄に空気を読まず

ストレートに尋ねた

サリー

イザベラさんは、私がアイドルになったころからの担当で、
何でも話せるお姉さんのような存在です

ジョセフ

そうか。イザベラにシオンの事を話したことはある?

サリー

ええ、過去のことも相談したことがあります。シオンのことも…

ジョセフ

その、羽のことも?

サリー

…はい。

ジョセフ

そうか

ジョセフはサリーの楽屋で目を光らせていた。
机の上に置かれたジュースの缶や、
お菓子のパッケージに目が留まる。

手に取り、パッケージに描かれた
デザインをじっと見つめた。

そこには、堂々と1匹でポーズを決める
シオンの姿が大きく印刷されている。

背景に他のメンバーの影もなければ、
名前すら記載されていない。

ジョセフ

なるほどな

この状況が示すものは明白だった。

スポンサーたちの関心はグループ全体ではなく
シオンただ1匹に集中していたのだ。

広告費は莫大な金額だったに違いない。

ジョセフ

賭けの話もあったが、真実はこれだな…

イザベラはシオンを脅して引きずり下ろし、サリーをセンターにすることで自分の懐を潤そうとしていたんだ

サリー

ジョセフさん?

ジョセフ

ん?

サリー

イザベラが何か…?

ジョセフ

いや、なんでもないよ。ああ
サインありがとうな。

気軽な調子で礼を言うと、楽屋を出ていった。

廊下に出たジョセフの表情は一変していた。

イザベラの狙いはほぼ確定だ。

シオンの存在を消してでも
サリーを売り出そうとしている――その裏には

莫大な金が絡んでいるに違いない。

ジョセフの悪しき直感は
ますます確信を深めていた。

ジョセフ

にやり

つづく