実際、1年ぐらいは活動を停止していた。

とはいっても性的指向が変わる筈もなく、ましてや性欲だって無くなる訳ではないので、相変わらずネットサーフィンしてはオカズを漁る事は止めなかった。



ちょうどその頃、Appleから初代iPhoneが発売になった。新しいモノ好きの俺は発売日に表参道のSoftbankに並び手に入れた。初めて触るスマートフォンに感動してアプリを入れまくった。当時は今ほどアプリの数は無かったが、その中でひときわ光るアプリがあった。



「Grindr」



というアプリだ。このアプリを最初に起動した時には猛烈に感動した。なんとGPSで近くのゲイが探せるではないか。今でこそ、そんなの当たり前の機能だが、ゲイの出会い系ツールといえば伝言ダイヤルしか知らない俺にとって、顔と場所が簡単に分かるなんて、なんて活気的な機能なんだと思った。学生時代にこんなツールがあったら、俺の青春時代はもっと明るいものになっていたかもって真剣に思った。



すっかり食い付いてしまった俺は、ゲイ活を止めようと誓った事も忘れ、暇を見てはアプリをいじり倒してた。いじっているうちに好奇心が抑えられなくなり自分のプロフも掲載した。SMへの興味もまだ残っていたので、プロフにはSMに興味ありみたいな事を書いていたと思う。そんな時、カッコ可愛い凄い好みの子(以降K君と呼ぶ)を見つけた。しかも近所。ただ、K君は20代、俺は40代だから、絶対反応は無いだろうなと思いつつダメ元で声をかけてみたところ、すんなりOKの返事があったので、早速近所の居酒屋で会う約束を取り付けた。



待ち合わせ場所で初めて見たK君は、アプリのアイコンよりも全然可愛くて、一気に緊張してしまったけど、居酒屋で酒が入ると段々リラックスして話も盛り上がった。そしてSMプレイにも凄い興味がある感じだった。話が盛り上がるうちに話だけでは満足しきれなくなってきたのか、K君は「今から俺の家に来ませんか?」って誘ってきた。

家に行くかどうかちょっとは迷ったが、結局は家に行く事にしてソフトなSMプレイを楽しんだ。プレイ内容の詳細については省略するが、当然ながら恋愛感情は持たなかったし、エッチも無しだったので、さほど罪悪感は無かった。



とはいえ、ゲイ活はしないと誓ったにも関わらず、再開してしまった事に多少の後悔を感じつつ、肉体関係の無いSMプレイぐらいなら良いかと、またも身勝手な解釈で自分を納得させ、ちょっと変わった形でのゲイ活は再開した。