夫婦別姓の件を除けば、お互いに仲良く友達みたいな関係で、あちこち旅行に行ったりして楽しい新婚生活だった。二人とも、まだまだ遊んでいたい年頃だったので、子供の事もあまり真剣に考えていなかった。



ところが、妻の妹が妊娠した事をきっかけに状況は変わった。身近な人に子供が出来ると、やっぱり俺も急に子供が欲しくなってきてしまった。性的指向の事で負い目がある俺が言える立場ではないことは分かってるけど、そろそろ子供を作らない?みたいな事を聞いたような気がする。気がするっていうのは、ちょっと辛い記憶のせいで頭が無意識に忘れようとしているのか、あまり正確には覚えてない。何が辛かったかというと、彼女の答えが「私みたいな出来の悪い人間の分身は欲しくない」だったから。



そういえば、結婚前にも似たような事は言ってて、それも結婚を避けている要因のひとつだった事を思い出した。幸せな結婚生活を送るうちにすっかり忘れていたけど、気持ちは全然変わってなかったのかと思うと切なかった。子供を欲しいと思えるような家庭に出来なかった自分が情けなかった。性的指向を隠して結婚した俺に対する神様の罰かとも思った。



この一件以降、我が家で子供の話をすることはタブーになってしまった。