ルーガル

ひとつ、忘れていたことがある。

ジャハ中央にある"翠緑の塔"。
その最上階で、二人は会話を交わしていた。

リリーシカ

忘れてたって、ノックすること? それとも奇襲をかけること?

ルーガル

昔、君を空の散歩に誘ったことがあっただろう。人に見られたら困ると君が言うので、夜に出かけたことが。

リリーシカ

あったね、そんなこと。夜の空を泳ぐのは、気持ちよくて面白かったよ。

ルーガル

そうか? あの日はとても天気が良く、日の光がポカポカと心地よかった。私は本当は、昼間の空を飛びたかったんだ。なぜかやめてしまったけれど。

リリーシカ

今はそんなことより他に、思い出してほしいことがあるんだけど。

ルーガル

何だ?

リリーシカ

決まってるでしょ。私が君の命を狙っていて、私たちが殺し合いをしていることだよ。

ルーガル

そういえばそうだ。

リリーシカ

それじゃ、始めようか。

ルーガル

そうしよう。そして、さっさと終わらせよう。

ジャハの中央で、大きな音がした。

僕たちは急いでそちらを見上げた。
中央には緑色の立派な塔がある。そのてっぺんから、火柱が立ち上っていた。

ヤムカ

おい、馬鹿どものいそうな場所がわかったぞ。

コペ

あの塔を目指せばいいね。でも・・・

コペ

魔物がいるとは聞いてたけど、思ったより数が多いね!?

ヤムカ

はっ、これだけ的がありゃ、肩慣らしにはちょうどいい!

グージィ

ですです!

ヤムカが人形たちに命令した。
人形は両の手にひとつずつ、白い破片を持っている。高く掲げたふたつの破片の間に、まばゆい光が集まり始めた。

ヤムカ

魔法師相手には使えなかった攻撃だ。なんたって、殺しちまうからな。

人形たちの手元から光線が発射された。
光の触れた部分が焦げて消し飛ぶ。魔物の体が寸断され、コアがあらわになった。
それをめがけて、僕は剣を振るった。

ベシワク

えいっ!

それぞれのコアを破壊すると、魔物たちはチリになって消えた。

コペ

いい感じだね!

ベシワク

よし。このまま進もう!

僕は緑色の塔を見上げた。
塔は屋根から煙を上げ、それでもなお、そびえていた。

ルーガルとリリーシカ①

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