ー現在ー

サリー

わ、私が何を
隠しているっていうの?

フェリックス

それはこのロッカーの中を開ければ分かることです。

フェリックス

おそらく、リックの元から
消えたドラッグがここに
隠されているのでしょう

サリーは目を見開き
フェリックスの言葉を聞いて
驚きと戸惑いの表情を隠せなかった。

自分の過去の行動が次々と
暴かれていくようで、身体が震えた。

サリー

わ、私が盗んだなんて
証拠はない…

サリー

デイビスがシオンが
盗んだと証言してるはず

フェリックス

はい、デイビスは
シオンさんだと
勘違いしていたようです

サリー

勘違い?

フェリックス

はい、シオンさんが
アタッシュケースを持って
2階の窓から飛び降りたと
言っています

サリー

それが?

サリーは何もかもを否定するように言ったが
心の中で何かが引っかかっていた。

フェリックスはサリーの反応に少しだけ
微笑みを浮かべ、さらに説明を続けた。

フェリックス

いくら猫とはいえ、妊娠しているはずのシオンさんが2階の窓から飛び降りるでしょうか?

フェリックス

驚異的な身体能力をもつあなただからこそ、それが可能だったのです

サリー

!!










ー3年前ー

リックのドラックが入ったケースを眺め
心の中で、サリーは葛藤していた。

シオンを守るためにとっとと
処分するべきだと頭ではわかっていた。

けれど、ケースを見ながら
思わずため息が漏れた。

リックから奪ったこの「ドラッグ」は、
今やサリーの手の中で新たな力を
持ちつつあった。

袋の中身が少しずつ彼女を
引き寄せていくのを感じた。

お金が手に入る

未来が変わる――その誘惑に抗えず

サリーはケースを見つめたまま
しばらく動けなかった。

何度もその袋を握り直し

売るべきか、捨てるべきか

それを繰り返して考えた。

気づけば、時間が経ち
サリーの決意はまだ決まっていなかった。











ー現在ー

フェリックスは静かにため息をつき、
サリーをじっと見つめた。

その瞳にはどこか悲しみと優しさが宿っている。

フェリックス

亡くなったシオンさんは
最後まであなたを
信じていたはずです

サリー

シオン…

自分の弱さ、自分の過ちが
愛する親友を死に追いやった。

その事実が胸を締めつけ
息が詰まるようだった。

サリー

私はシオンを
守るはずだったのに…

サリーは震える手で胸を押さえると
かつてのシオンとの思い出が次々と蘇る。

無邪気に笑い合った日々

夢を語り合った時間

そして最後に見たシオンの笑顔。

そのすべてが
今や彼女の罪悪感と後悔に重くのしかかる。

フェリックスはゆっくりと
サリーの前に歩み寄り
優しく彼女の手を取った。

そして

ロッカーの鍵をそっとその手に握らせる。

サリー

え、どうして?

サリーは驚きに目を見開き
フェリックスを見上げた。

フェリックスはまっすぐに
彼女を見つめ、静かに言った。

フェリックス

これはあなたが判断すべきことです。自分が何をすべきかを選びなさい。

フェリックス

それがシオンさんの
願いでもあるはずです

サリーはフェリックスの言葉に
心を揺さぶられ、鍵を握りしめた。

その手は震えていたが、

そこには少しずつ決意が滲んでいた。

目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。

サリー

シオン…ごめんなさい…

フェリックスはそっと頭を下げ
無言のままその場を去った。

サリーはその場に立ち尽くし、
鍵を握る手に力を込めた。

涙をぬぐいながら

彼女の心には一つの誓いが芽生えていた。

サリー

私はこの罪を償う。
そしてシオンの思いを
ついでいくわ










ー後日ー

サリーはアタッシュケースを抱え
警察署の扉をくぐった。

ニュースはすぐに
「アイドルのサリー、黒い過去とドラッグ」
と大きく取り上げられ、

シオンの殺害事件と
サリーのドラッグ所持の話題は、
連日世間を賑わせた。

記者会見の場で、サリーは深く頭を下げた。

サリー

私の過ちで多くの人々を失望させたこと、そしてシオンを守れなかったこと、心からお詫び申し上げます。

その声は震えていたが、言葉には偽りのない後悔と
決意が込められていた。

ただ、シオンの過去については
一切触れなかった。

それは彼女自身が守るべき友の尊厳だった。






しばらくして、サリーは孤児院を訪れた。

子どもたちの笑い声が響く中
一匹の少年が彼女を見つけて駆け寄ってきた。

ダニエル

サリーおねえちゃん!

サリー

久しぶりだね、元気だった?

ダニエル

うん!!でもみんなが
おねえちゃんのこと
悪く言うんだ

少年の無邪気な声に、
サリーの心はチクリと痛んだ。

自分の行いがどれだけ多くの人を傷つけたのか、

そして、この純粋な少年にどれだけの
重荷を背負わせたのか

胸が締めつけられた。

サリー

そう、心配かけてごめんね

ダニエル

ボクは平気だよ!

その言葉に救われたような気持ちになり
サリーはそっと彼の小さな手を握った。

サリー

ダニエル、君さえよかったら
これから私と一緒に暮らさない?

ダニエル

え!ぼく
おねえちゃんと暮らせるの?

サリー

ううん、これからは
“おねえちゃん”じゃなくて
“ママ”って呼んでほしいの。

サリー

私はあなたの
自慢のママになりたい

ダニエル

ママになってくれるの?

サリー

ええ、あなたを必ず
幸せにするわ。
シオンが守ろうとした命を
今度は私が守る番だから

ダニエル

シオン?

サリー

そう。私の大切な友達よ
あなたを守ると約束したわ

ダニエルは満面の笑みを浮かべ
力強くサリーに抱きついた。

ダニエル

ぼくうれしい!
ママ、大好き!

二匹は手をつなぎ、未来へと歩き出す。

その歩みはまだ小さく、不安定だったが、

サリーの心には確かな覚悟があった。

私の罪が消えることはない。

それでも、この命を懸けて

シオンが守ろうとした未来を生きる。

それが、私にできるたった一つの償い

空には柔らかな光が差し込み
二匹の行く道を照らしていた。

サリーは小さな手の温もりを感じながら
これから始まる新たな人生を、静かに
しかし力強く見据えていた。

おしまい

最後まで読んでいただきありがとうございました。
Kakuzooが改修終わるまで他のサイトにお引越しします。Xで活動報告しますのでフォローよろしくお願いします。それではまた猫
探偵シリーズでお会いしましょう~

30話 消えたドラックの行方最終話(番外編)

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