シオンの周囲の聞き込みは続いた。

しかし返ってくる答えは決まって、

「シオンは明るくて性格の良い子だった」
というものばかりだった。

それでも、
デビュー前の噂がちらつく。

誰もがその話を知っているようだが
口を閉ざしている。

トップアイドルが、どんな過去であれ、
そんな場所で働いていたとは
言いたくないのだろうか。

ワトリーがもやもやとした気持ちで
考え込んでいると、ジョセフが口を開いた。

ジョセフ

ワトリー、アレクなら何か知ってるんじゃないか?
彼はシオンのマネージャー兼
社長だし、過去のことも把握してるはずだ

ワトリー

うん。聞いてみるのだ

アレクを訪ねることにした










コンコン

アレク

どうぞ

ワトリーが扉を開けて部屋に入ると、
アレクが2匹の猫と話をしていた。

1匹はオス、もう1匹はメス。

アレク

今、接客中なんだ。
後でもいいかい?

ワトリー

分かったのだ




「ワトリー!」

突然、その部屋にいた2匹のうち、

オスの方が声を上げた。

その声は、ワトリーには馴染みのあるものだった。

ゲン

久しぶりだな

ワトリー

ゲンさん!

そしてもう1匹、メスの方にも目をやる。
彼女は静かに立っていた。

カオリ

・・・

ワトリー

…カオリ?

アレク

そうか、あのサーカス事件を解決したのはフェリックスだったな

ジョセフ

最終的には俺が逮捕したけどな

ワトリー

ゲンさん、カオリ、キャットタウンにまた来てくれたのだ!

ゲン

ああ。いよいよ新しい
サーカス団員が集まって、ここでパフォーマンスをする予定だったんだ

ゲン

でも事件があって、
結局できなくなったんだよ。
その説明を今、アレクさんに受けていたところさ

カオリ

・・・

ゲンとカオリは、以前キャットタウンに
やってきたサーカス団の団員だった。

その時にサーカスで起きた事件を
フェリックスが解決した際、ゲンと親しくなり
話せなかったカオリに
ワトリーが文字やジェスチャーを使って
コミュニケーションの仕方を教えたのが
きっかけで、二匹は友達になった。

(サーカス団猫殺事件の謎より)

ゲン

また事件があったらしいな

ワトリー

そうなのだ。アレクに聞きに来たのだ

ワトリー

アレク、シオンのデビュー前のことを教えてほしいのだ。
きっとそのことで、彼女は悩んでいたはずなのだ。もしかしたら
脅されていたかもしれないのだ

アレク

その噂は本当だよ。しかし、彼女はその過去を乗り越えて、それ以上に輝く素質を持っていた。

アレク

私は彼女を過去なんかで評価せず、これからの輝くアイドルとして育てたかったんだ。

でも…守ってあげられなかったことが悔しくてならない

可愛そうになぁ。
(今までシオンにいくらつぎ込んできたか・・・)

ホントに残念です。

ワトリー

やっぱりシオンの過去を知ってるのはサリーなのだ
もう一度サリーに話を聞いてくるのだ

カオリ

ワ…ワト…リー…

ワトリー

カオリ!話せるようになったのだ?!

カオリ

ワトリー…私も…行く

ゲン

ワトリー、連れて行ってやってくれ。おれ達はしばらくしたらこの街をまた離れるんだ。それまで
ワトリーと一緒にいたいんだろう

ワトリー

分かったのだ、カオリ。一緒に行くのだ

ポテト

先輩、カオリって、あのサーカス団の…?

ジョセフ

ああ、蛇女って言われたあのカオリだよ

以前のカオリ↓

ポテトとジョセフは、かつてボロボロだった
カオリの姿を思い浮かべながら、

彼女が以前とは違う、穏やかで強い目を
していることに安心し、
ほっとした表情を浮かべた。

こうして、再びワトリーたちはシオンの謎に
迫るため、サリーの元へと向かった。

シオンの過去に何があったのか、
その影が徐々に見え始めていたが
真実はまだ深く暗い闇の中にあった。





ワトリーは再びサリーの楽屋を訪れた。
ドアをノックし、中へ入ると、

サリーは既に決意した表情で待っていた。

ワトリー

サリー、何度もごめんなのだ

サリー

いいの。私もシオンがなぜ亡くなったのか、真実を知りたいの

カオリ

・・・

サリー

その方は?

ワトリー

ボクの友達なのだ
カオリっていうのだ

サリー

そう。こんにちは。

カオリ

・・・

サリーはそれ以上追及せず、ワトリーに向き直った。

サリー

ワトリーくん、もう知っているとは思うけど、シオンはデビュー前、あるお店で働いていたの

ワトリー

知ってるのだ

サリー

実は・・・私もシオンと同じ店で働いていたの

ワトリー

そうだったのか

サリー

私たちはそのバイトで稼いだお金を使って、毎晩夜遊びしていたわ。

シオンには恋人がいて、いつものクラブで一緒に遊んでいたの

ワトリー

恋人がいたのだ?

サリー

ええ、すごく仲の良い2匹だったわ

サリー

でも、その生活が私たちが事務所に入ることになって、いろいろと変わったの。特に、シオンのお客さんの一匹がとても怒っていた

サリー

お店の常連で、シオンに特別執着していた猫だったのよ

ワトリー

その後も会っていたのだ?

サリー

いいえ、それはないと思うわ。
シオンはきっぱり断ち切っていたから

ジョセフ

じゃあ、その客が直接脅したり
シオンに近づいた可能性は低いのか?

サリー

わからない。しばらくは大丈夫そうだったけど、
ある日突然また怯え始めたの

ポテト

アイドルにはそういうこと、よくある話なんですか?

サリー

確かに、アイドルにはよくある話かもしれない。

でも…シオンの場合は、特にその客が関わっている気がするの

ワトリー

どうしてその客だと思うのだ?

サリーは黙ってゴミ箱の中を探り
一枚の封筒を取り出した

サリー

これがシオンの楽屋にあったの

ワトリー

これは?

サリー

シオンのお客さんは、いつもの
部屋に大量の羽を撒いていたの。

まるでシオンを天使か何かみたいに扱っていたらしいの

サリー

そしてその羽で遊んでいるシオンの写真を撮っていたって、本人も言ってたわ

ワトリーは羽を慎重に手に取りながら、
これまで集めた情報が少しずつ
繋がり始めるのを感じた。

その白い羽はただの羽ではない。
シオンにとって、それは恐怖の象徴でも
あったのかもしれない。

ワトリー

この羽を送ってきたのが、シオンを追い詰めた客かもしれないのだ

ジョセフ

その客が、今もシオンに執着しているのかもな

ワトリー

一週間前にシオンのマンションに侵入したのもそのお客なのか?

サリー

それは分からないわ。でもその後からシオンはずっと怯えていたの

ワトリー

そのお客に聞いてみるのだ

ワトリーは決意を新たにし、
事件の核心に迫ろうとしていた。

シオンの死の真相は、彼女の過去と、
その執着から生まれた暗い影の中に
あるのかもしれない。

つづく