次の日の朝、守はいつものように目を覚ました。

昨日はゲームの中で散々な目に遭ったが、
マリアとルナという頼れる仲間との出会いが、
彼に一筋の希望をもたらした。

明日は有給休暇だ。

全ての時間を使って
あのゲームに没頭しよう。

そんな決意を胸に、守はバイト先に向かった。

退屈な仕事を淡々とこなせば、
またシンシアさんたちと冒険に出られる。

守の頭は、そのことばかりでいっぱいだった

休憩時間

いつものように、守は買ってきた
弁当を静かに食べていた。

すると、そばで佐々木と森井がスマホを
片手にこそこそ話しているのが聞こえてきた。

彼らの会話はいつも同じだ。

どうせまた、エッチな動画の話だろうと守は思った。

佐々木

これ見ろよ

森井

はは、バッチリじゃん

佐々木

俺、こういうシチュエーションに興奮するんだよね

森井

わかる、俺も

はぁ、またエッチな動画の話か

そのとき、パートの田中さんが休憩室に入ってきた。

田中さん

なあに?エッチな動画?

佐々木

そ、そんなんじゃないですよ

田中さん

ふふふ、若いわね

田中さん

ちょっと、2人手伝ってくれない? 2階にある商品ケースに手が届かないのよ

佐々木

えー、今休憩中ですよ

田中さん

5分でいいの。その分、後で休憩を伸ばしてあげるから、お願い

森井

え~

田中さん

お願い~(ゆっさゆっさ)

佐々木

わ、わかりましたよ
(胸揺らすの勘弁してくれ)

森井

うわぁ~

仕方なく、佐々木と森井は倉庫に向かった。

田中さん、昨日は紗良ちゃん1人でやらせてたくせに、ひどいよな

守は弁当を片付け、休憩室を出ようとした。

そのとき、

テーブルに伏せて置かれた佐々木の
スマホが目に入った。

ふと、どんなAVを見ているんだろうという
好奇心がよぎった。

何気なくスマホを手に取り
画面を見てしまう。

そこに映っていたのは、
女子ロッカーの映像だった。

なるほど、盗撮ものか

一瞬、軽く受け流しかけた。

しかし、そのとき、

画面から聞こえてきた声が守を凍りつかせた。

そぉ~そこのケース
重いのよねぇ・・・

え?この声・・・田中さん?

守は耳を疑った。

佐々木と森井の声も微かに聞こえる。

守は驚き、もう一度画面に目をやった。

そこに映っていたのは、

見慣れたこのスーパーの女子ロッカーだった。

こ、このロッカーってまさか!?

一気に血の気が引いていく。
これがただのAVではない、

リアルな盗撮だと理解した瞬間、守の手は震えた

と、盗撮?

これは間違いなく

このスーパーの女子ロッカーだ。

画面に映るロッカーには、見覚えがあった。

あいつら――佐々木と森井――の仕業に違いない。

紗良ちゃんのロッカーにカメラを仕掛けたんだろう

どこまで腐ってるんだよ

どうする? 店長に言うか?

今日は店長が遅番だ。

店に着くまでまだ時間がある。

そして、もうすぐ紗良の
出勤時間が迫っていた。

どうすればいい? どうする!

そうだ、天城君だ!

天城くんなら、きっと紗良ちゃんを守るために
何かしてくれるはずだ。

彼ならこの状況に冷静に対処できるだろう。

悔しいが、今は彼に頼るしかないと
守は思い詰めた。

しまった
天城君は今日休みだ!

普段から同僚とほとんど
コミュニケーションを取らない守は、

当然ながら天城の連絡先も知らなかった。

彼の携帯番号も、ラインも、何も知らない。

頼りたくても、どうしようもないのだ。

ど、どうすれば…

紗良

おはようございます

紗良ちゃん!!

お、おはようございます…

心の中でどうするべきかを
考え続けていたが、答えは出ない。

どうすることもできず、
ただ紗良を見送るしかなかった。

そして、作業を終えた佐々木と
森井が休憩室に戻ってきた。

佐々木

紗良ちゃん
おはよう(ニヤニヤ)

森井

紗良ちゃん今日もかわいいね

紗良

おはようございます

紗良は軽く挨拶をして、
そのまま2階のロッカー室へ向かった。

あっ・・・

守はその光景をただ見つめるだけだった。

頭の中では「止めろ!何かしろ!」と叫ぶ
声が響いているのに

体が動かない。

恐怖と無力感に縛られ
何もできずにいる自分が情けなく
腹立たしかった

一方、1階の休憩室では、佐々木と森井が
スマホを食い入るように見ている。

彼らは映像を楽しむかのように、
画面に釘付けだった。

佐々木

ん?

佐々木

藤井さん、休憩終わったなら
さっさと仕事に戻って!

・・・

守は歯を食いしばり、
何も言い返せないまま休憩室を出た。

胸の中に広がる重苦しい感情――
それが怒りなのか、恐怖なのか、無力感なのか、

守には分からなかった。

ただ一つ確かなのは、
紗良が危険な目に遭っているという
ことだけだった。

つづく