マジルはシンシアの髪を乱暴に引っ張り上げ、
彼女の顔を覗き込んだ。

マジル

へっ、ありふれた顔だな。
まあ、いいか

マジルはシンシアの写真を撮り始めた。

シンシアは慌ててチャットモードから
音声モードに切り替え、現実の声で叫んだ。

シンシア

君たち
やめたまえ!

48歳の中年男性の声が、
シンシアのアバターから響く。

しかし、マジルはそれを聞いて大笑いした。

マジル

あーはっはっは!!
おじさんの声はさすがになえるな

シンシアの音量を強制的にミュートにした。

シンシア

やめろと言っている!
聞いているのか!!

彼は笑みを浮かべながら、シンシアを
無理やり押し倒し、強引にキスをした。

シンシアのアバターは押さえつけられ
必死に抵抗しようとするが
相手とのレベル差があり

何もできなかった。

彼女の体力はじわじわと削られていく。

シンシア

体力が減っていく!!

フク

シンシアさん!
このままじゃ……死んでしまう!

このゲームは1度死んでしまうと同じアバターは
使えない。もう一度、1からレベル上げしなくては
ならないのだ

トラスト

さあ、次はお前の番だ

やめろぉ!!

シンシア

誰か助けてください!!

マジル

俺らレベルのやつは
ここにはいないんだよ

トラスト

影で見てる奴らもいるかもな!
あーはっはっ

マジル

全部脱げよ!殺しちゃうよ!

なんで、こんな目に毎回合わなきゃいけないんだ……なんなんだ、このゲームは……

動けなくなったフクを見てトラストは、
自分のベルトを外した

トラスト

よーし
俺のも見せてあげよう

その時、トラストが下半身を露わにし
フクは驚愕の表情を浮かべた

!?

そのリアルさに恐怖が押し寄せ、

守は思わず電源ボタンに手を伸ばした。

リアルすぎだろ!!
本当に犯す気かよ

電源を切ろうとしたその瞬間――




強烈な銃声が響き、トラストの体が吹き飛ばされた。

トラスト

っつ……てめぇ!

トラストが立ち上がり、
怒りに満ちた表情でその方向を見ると、

そこには昨日助けてくれた

女性アバターが立っていた。

その冷ややかな表情から、相手を見据える目が光る。

彼女の隣から、かわいらしい少女が

ひょっこり顔を出し、

にっこりと微笑んだ。

マリア

お兄さんたち、まだやるの?
無駄だと思うけど

トラスト

くそがっ!!

トラストは苛立ちながら吐き捨て、
マジルと共に姿を消した。

マリア

あ、落ちたね

マリア

大丈夫?

ありがとうございます……

隣で倒れていたシンシアは、
すでに体力が底を突いていた。

助けてくれた女性アバターは、
シンシアにエネルギーをチャージしたが、
彼女は何も言わなかった。

その沈黙は、彼女がどれほどショックを
受けているのかを物語っていた。

マリア

私はマリア。こっちはルナだよ

ルナ

・・・

昨日も助けてくれましたよね?

マリア

この子、キャラに合わせてあんまり話さないようにしてるんだって

そうなんですね……僕たち、まだこのゲームを始めたばかりで……

マリア

そっか。このゲーム、実は
クソゲーで有名なの
知らなかったの?

特に女の子キャラを選ぶと
ひどい目に合うことが多いんだよ

そ、そうなんですか……

その瞬間、フクの胸には複雑な感情が湧き上がった。

このゲームの闇の深さと、

自分が関わってしまった世界の危険性――
それを理解するには、
まだ時間がかかりそうだった。

シンシアさん、大丈夫ですか?

シンシア

……なんで、女の子がこんな目に遭わなきゃいけないんだ……

マリア

そうだよね。でも、
それを楽しんでるユーザーが多いのも事実なんだ。

悔しいなら、私たちみたいに
レベルを上げるしかない。
それか、
このゲームを辞めるかだね

どうして助けてくれたんですか?

マリア

私たちはパトロールしてるの
私たちのチームの合間を縫って
こういう奴らを懲らしめてるんだよ

その言葉を聞き
シンシアはゆっくりと立ち上がった

シンシア

許せません……
何も知らないプレイヤーを

こんな風に傷つけるなんて……。ボクが殴られてる間に、
何人かここを通り過ぎたんですよ

シンシア

助けてってチャットで
送ったのに、誰も無視して、
知らんぷりだった。

一瞬、立ち止まって見てるだけの奴までいたんです!

フクも、シンシアの言葉に思わず頷く。
確かに、何人かが通りかかったが、

誰一人として助ける素振りすら見せなかった。
彼らの無関心が胸に重くのしかかる

シンシアさん・・

シンシア

マリアさん、ボクもパトロールに連れて行ってくれませんか!

マリア

え!

シンシア

こんなことが繰り返されるのを
もう見過ごしたくないんです!

マリア

パトロールは私たちが勝手に
やってることだから、
別にいいけどね……でも

私たちのチームはレベル70以上じゃないと入れないんだよ

シンシア

それでも構いません。
ボクはただ、パトロールについて行きたいんです

シンシア

フクさん一緒に行きましょう!

う、うん……わかった。
僕も一緒に行くよ

真剣に訴えるシンシアを見て、

フクはただのゲームの中での出来事ではなく、
仲間として、

その背中を押してやりたいという思いが
胸に強く芽生えたのだ。

ルナ

・・・

つづく

7話 救いの光と絶望の闇

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