11.適応

私

茜ちゃんを助けるっていうの、
私にも手伝わせて欲しい!

そうお願いすると、
芹ちゃんは少しだけ驚いた様子だった。

芹

え?
手伝うって・・・私を?

私

うん!
助けて貰った芹ちゃんを
助けたいっていうのもそうなんだけど、
何より何もしないで
待っているのは嫌なの!

本音は一人で居るのが嫌なだけだ。

けど、それを素直に言うのは躊躇われた。

だからそれっぽい理由をでっち上げた。

芹

・・・普通に危ないよ?

私

でも芹ちゃんだって
やってることだよ

私が危険だと言うのなら、
芹ちゃんだって十分に危険だ。

芹

まぁ、そうなんだけど・・・
でも私はあなたにできないことができる

だから安全ってわけじゃないけど、
自衛できるかどうかは大事だよ

私

そ、それは・・・

それはぐうの音も出ない正論で、
確かに私には芹ちゃんのようなことはできない。

芹

だけどまぁ、
何もしないで居るのが嫌だ
っていう気持ちは分かる

私もそういう気持ちがあるから、
こうして色々やっているわけだし

私

た、確かに私は何もできないけど、
さっき芹ちゃん言ったよね?

練習すればできるようになるって!

芹

言った・・・ね

私

私何でもするから、
練習でも何でも!

だからっ・・・!

そこまで言うと、
芹ちゃんは苦笑し私の手を取った。

芹

本音を言うとね、
あんまりあなたに
無茶をして欲しくないの

私ね、
もうずっと独りでここに居るから、
誰かとゆっくり話をするなんて
もうずっとしてないわ

だからあなたとこうして話せて、
すっごく嬉しいの

独りは慣れっこだけど、
やっぱり誰かが居るのって落ち着くから

私

芹ちゃん・・・

芹

だから私はあなたを
危険な目に遭わせたくない

あなたに関しては
分からないことだらけだけど、
だからこそ
安全な場所に居て欲しいって、
そう強く思うわ

私

でも・・・

芹

うん・・・
それでもあなたは
何かしたいんだよね?

私

・・・うん

芹

なら、
そういうあなたの意思を
私は尊重したいと思う

私

それって・・・!

芹

うん・・・私の手伝い、
して貰いたいと思う

もちろん最低限のことは
先に覚えて貰うわ

だけど私が大丈夫だと思える
レベルになるまでお手伝いはダメ

これだけは譲れない

つまり私が頑張れって成果を出せば、
それで全て思い通りになるというわけだ。

もちろん上手くいく保証はないけれど、
活路は開けた・・・!

私

わ、分かった

無茶を言っているのも
自覚してるから、
芹ちゃんの言うとおりにする

芹

うん、なら・・・いいよ

そう言って
芹ちゃんは私の手を離し、
小さく吐息をこぼした。

芹

それじゃあ早速始めよっか

茜さんのことを思うと、
あんまりのんびりできないから

私

うん!
私、頑張るね!

芹

まぁ、ほどほどにね

私

こういうのは気合が
大事だと思うんだよね!

芹

とりあえず、
あなたには夢に適応して貰うわ

私

夢に適応?

芹

ここが夢であると自覚して、
普通じゃないことが
起こり得る場所なんだって、
信じ切って貰うわ

私

ふむふむ

芹

その為に今から私は
あなたにここが現実じゃないって、
理解して貰おうと思う

私

現実じゃないって
理解するって・・・
どうやって?

すると芹ちゃんは
椅子から立ち上がり、
同時に私にも立つよう促した。

芹

えっとね、
こうするの

そして悪戯な笑みを浮かべた芹ちゃんは、
両手を広げて、
パンと音が立つよう打ち鳴らした。

私

へ・・・?

すると急激に視界がぐにゃりと歪み、
気付けば見慣れぬ体育館に立っていた。

私

あ、あれ、図書室は!?

芹

場所を変えたの

ここは私の夢だから、
私の思うがままになんでもできるわ

私

そ、それはまた・・・

なんて便利なのだろうか。

というか現実なんかよりも
よっぽど居心地が良さそうな気さえする。

芹

これからすることを思うと、
広い方が都合がいいからね

私

つまり場所を移したのは下準備で、
本番はこれから・・・と

芹

ええ、もちろん

これからあなたには、
非現実的なことを身に沁みて
味わって貰うわ

やだ、何か芹ちゃんが怖い・・・。

私

あ、あの・・・それって危なくは・・・

芹

危なくはないわ

ちゃんと加減するから

私

それって加減されなきゃ
危ないということなのでは!?

芹

それに最初から
危険なことはさせないから安心して

私

それはつまり、
いつかは危険なことを
させるってことだよね!?

多少の危険は承知の上だけれど、
やっぱりいざそうなるとドキドキしてしまう。

芹

とりあえず的を・・・

芹ちゃんがそう言うと、
体育館の隅に何かが現れた。

私

何あれ・・・蟻?

芹

蟻よ

私

え、嘘・・・大きすぎじゃない?

そうなのだ、
現れた蟻は私の身長の何倍もの大きさがあった。
はっきり言って気持ち悪い。

芹

虫は嫌い?

私

す、好きではないかな・・・

芹

気が合うわね

私は大嫌いよ

だから的として使うの

ストレス発散にもなるし

私

な、なるほど・・・

しかし的とはどういうことなのだろうか。

私

それで、
これからどうするの?

蟻に何かするというのは
想像ができるのだが・・・。

芹

何って、
普通じゃない方法で
八つ裂きにするわ

私

やっぱり芹ちゃんが怖い・・!?

芹

まぁ見てて
これから非現実のフルコースを
あなたに見せてあげるわ

自信満々にそう言う芹ちゃんは、
何かこう・・・むちゃくちゃ怖かった。