ー誕生日の3日前ー
夜遅く、みんなが寝てしまった頃、私は妹を静かに起こした。
「オーロラを見に行くよ、リリー」
「お姉ちゃん……こんな夜遅くに行くの?熊や鹿と遭遇するかもしれないのに…?」
寝ぼけている妹にローブを着せる。きっと抜け出せるだろう……と思うしかない、と震える自分の手を必死に押さえる。
そっとドアを開けて外に出る。いつもより敏感に感じ取れる「夜」…これからどうなるんだろう。
オーロラを見た後どうしよう?村に戻れば生贄……北の地域で暮らすしかない。言葉が通じるかも、同じコインを使えるかもわからないけど……でもやると決めた。
ランタンを手に森を進んでいく。このまま進めばーそう思った時だった。
「キャアァァ!」妹の叫ぶ声が聞こえる。
「リリー!?」振り返るとそこには5頭のオオカミが妹のローブに噛みついて取り囲んでいた。
妹の持っていたランタンから火が飛び、近くの木に燃え移る。
「リリー!!!!」オオカミを蹴り、一瞬の隙をついて妹の手を引っ張る。ビリビリと音を立てて妹のローブが破ける。なんとかオオカミを撒くことができたが、火が大きくなったことで村の人が動き始めている。まずい……このままでは追いつかれる…!
「仕方ない……ね」ゆっくりと歩き出す。
「え………お姉ちゃん、どこいくの!?」
オーロラを見せてあげないと……それがあの子の夢なんだから。私がここで村に帰れば、村の人々に「妹はいなくなった」と言えば誤魔化せるかもしれないーそう思って私は一歩ずつ村の方へと進む。
「お姉ちゃん、村に帰るの?じゃあ私もー」
「リリー!ついてきてはいけません。……木に結ばれている紐をつたって北の地域に向かいなさい。お姉ちゃんは後からついていくから、ね。」自分のローブを妹に渡す。妹は私をぎゅっと抱きしめてから森の奥へと進んで行った。
……多分これで妹の顔を見るのは最後だろう。村の人たちのランタン明かりが近づいてくる。
「ユーリル!こんなところで何を……まさか脱走しようとしたんじゃ…!」
「お前は自分の立場をわかっているのか!名誉ある生贄がそんなことをしていいと思っているのか!?」両親にこっ酷く叱られる。
ー名誉ある?そんな訳あるもんか。私の人生の上辺しか知らないくせに……私を利用しているだ
けなのに
「ユーリル、リリーはどこへ行ったんだ?」
「リリーは……リリーは死んだよ。」
「なんだって……!?」村の人たちが一斉に騒ぎ出す。
「今更探したって見つからないよ。……だって私見たんだもの…リリーの……!」わざと涙を流して見せる。お願い。信じて。
「とりあえず、今日はもう遅いし一旦村へ帰ろう」という父親の一言で村へ帰り、私は誕生日の日まで自分の部屋に閉じ込められることになった。
続く