冷たい牢屋の中、
薄暗い灯りがぼんやりと揺れていた。
湿った石壁に囲まれ、
冷え切った空気が肌にまとわりつく。
御厄様は、目の前の鷹丸を
じっと見つめ、驚きに目を細めた。
冷たい牢屋の中、
薄暗い灯りがぼんやりと揺れていた。
湿った石壁に囲まれ、
冷え切った空気が肌にまとわりつく。
御厄様は、目の前の鷹丸を
じっと見つめ、驚きに目を細めた。



お前とここを出るじゃと?





ああ、そうだ。おれと一緒に
この屋敷を出るんだ





しかし……わしは封印されておる





だったら、その封印を解けばいいだけの話だろうが
それさえ解けりゃ、あんたも自由の身だ。外で好きなだけ酒が飲めるぜ


鷹丸の言葉に、御厄様はそっと
目を伏せた。
背後には、結界の光がゆらめく
炎のように揺れている。
静寂の中、その淡い輝きが壁を
ぼんやりと照らしていた。
牢の扉に手を伸ばそうとすれば
たちまち結界が反応し
雷鳴のごとき衝撃が奔る。
鋭い痛みが肌を焼き
空間そのものが震えた。



じゃが……この結界はワシの本体を取り戻さねば破ることはできん。お前では超えられんのじゃ


その言葉を聞くやいなや
鷹丸は最後の酒をぐいっと
飲み干し、盃を粗雑に投げ置いた。
そして、迷いなく御厄様を抱え上げる。



休憩は終わりだ。さあ、本体を見つけに行くぜ





鷹丸、やめよ……お前では無理じゃ


御厄様は静かに首を振る。
だが、鷹丸は聞く耳を持たず
牢の扉へと歩を進める。
その背には、確固たる決意があった。



なぁ、御厄様……おれは、澄音の笑顔を守りたいって、そう思ってたんだよ


鷹丸の声音がかすかに震える。
牢の扉に広がる結界の光が
淡くその横顔を照らした。



だけどよ……あいつに会ったときの顔はどうだ。
笑ってねぇどころか、痛みに顔をゆがめ、心までズタズタになってた。
——おれのせいで、傷つけちまったんだ


鷹丸は牢の扉に手を伸ばす。



鷹丸! やめよ
それに触れれば——


御厄様の制止も虚しく
次の瞬間——
轟音とともに蒼白い稲妻が鷹丸を貫いた
刹那、牢内を覆い尽くす閃光
耳をつんざく雷鳴が
空間を揺るがし
空気が一瞬にして焦げ臭くなる
ぐわぁぁぁぁぁ!!
焼けた鉄の杭を
ねじ込まれたかのような激痛が
指先から肩へ
そして全身へと駆け抜けた。
鷹丸の腕は一瞬で炭化し
皮膚が焼けただれ、焦げた肉の
匂いが鼻をつく。



それでも——あいつの笑顔が見れるなら……こんな腕なんざ
くれてやらぁ!!


奥歯が砕けそうなほど
食いしばりながら
鷹丸はなおも前へと歩みを進める。
雷撃の奔流(ほんりゅう)が
脊髄を灼き、視界が白く染まる。
だが、拳は止まらない。
……っくそがぁぁぁ!!!
渾身の力を込めた拳が
焼け爛れた手のひらごと
結界の扉へと叩き込まれる。
雷鳴すらかき消すような
衝撃とともに轟音が響き渡り
牢屋が大きく揺れた。
ついに扉が崩れ落ち結界が砕け散る。
鷹丸はその場に膝をつき
荒い息を吐いた。
視線を落とせば、炭のように
黒こげになった腕。
それを見つめ、鷹丸はかすかに笑った。



はは……まだ、腕は残ってらぁ……





鷹丸・・・


