猫鳴町を歩くは、鷹丸の姿。
背丈はすらりと高く、銀の髪は夜空を
切り裂く流星のごとく

紅のごとき赤い目は町の猫たちをして憧れ
抱かせるほど。羽織る着物は鮮やかに

風に揺れて目を引くも、
そんな彼を町の住人は、

ただ昼間からぶらぶらと遊び歩く気楽な
遊び猫としか思わぬのでございます。

おう、鷹丸じゃねぇか!

と声をかけたのは
川沿いでひなたぼっこを決め込む魚屋のオス猫。

今日も釣れもしねぇ魚釣りかよ?

鷹丸

うるせぇな。
今日こそ大物釣ってやるよ

へっ、良いご身分だぜ

鷹丸~、うちに寄ってきなよ

鷹丸

わりぃな、魚が逃げちまうからよ

とさらりとかわして、
悠々と足を進める。






その先、町外れに立つ異国じみた建物、
教会へとたどり着いた鷹丸。

鷹丸

ほぉ、これが教会ってやつか。普段は縁のねぇ場所だが、
じっくり見ると不思議なもんだな

口元に笑みを浮かべ、
建物をじっと眺める。

すると、
不意に背後から澄んだ声が響いた

どなたですか?

振り返れば、手にロウソクを持った
一匹の雌猫。
清楚な装いに身を包み、
その目には
警戒の色が浮かんでおる。

たか

おお、悪いね。ちょいと魚釣りに来たんだが、珍しい建物があったんで、つい見とれちまってね

フミ

魚釣り?

フミ

あなた、漁師さんですか?

たか

いや、俺はただの風来坊さ

だが、これがシスター猫の気に
障ったか、その顔は厳しくなり、
言葉も冷たくなる。

風来坊?そのような身なりで、この辺りをうろつかないでください。あなたのような下品な者がいるのは迷惑です

たか

あぁ、そりゃ悪かったな。
じゃ、失礼するよ

と軽く手を上げて、
その場を後にする。

だが、立ち去る振りをしながらも、ちらりと
教会の庭を見やる。

その視線の先、
奥に小屋の姿があるではないか。

鷹丸

ふーん、あそこか

鷹丸は小さく呟き
口元に不敵な笑みを浮かべた。

つづく