複雑な思いを抱えながら、守は自宅に帰り、
日常へと戻ろうとした。

洗面台の前に立ち

歯を磨く守の脳裏には
天城のキスが何度もよみがえっていた。

天城くん、なんであんなことを…もしかして俺のこと…?

ふと鏡に目をやると、そこには中年で
太った、冴えない顔をしてる
自分自身が映っていた。

現実に引き戻され、守は思わず声を上げた

そんなわけないだろう!!
俺みたいな汗くさいおっさん、
誰が好きになる?

しかも、俺は紗良ちゃんのことが大好きなはずじゃないか…大好きなはずなのに…

しかし、下半身はその思いとは裏腹に
反応してしまっていた。

守は、自分の感情と体のギャップに
苛立っていた。

くそぉ!

眠れそうもない。

その感情を振り払うかのように
守は久しぶりにオンラインゲーム
「地球防衛軍」にログインした。

何か別のことを考え、気を紛らわせたかったのだ。

ログイン画面が表示され、
懐かしいキャラクターが現れる。

フク

さすがに初期ギルドにもう
『シンシアさん』はいないよな…

守のキャラクター「フク」は、
しばらくゲームを離れていた。

仕方なく一人で冒険に出かけようとしたその時

シンシア

フクさん?

フク

シンシアさん!

シンシア

久しぶりですね

フク

もうとっくにこのギルドからいなくなったかと思いました

シンシア

はい、でもまたフクさんと会いたくて、たまにこのギルドに来ているんですよ

その言葉にフクは胸が熱くなった。

シンシアが立派な武器と
コスチュームを身にまとい
以前よりも強く成長していることに気づく。

フク

ボクがいない間も
頑張ってたんですね

シンシア

ええ、マリアさんとルナさんに
毎日しごかれてますからね!

フク

あの2人に…
そういえば、パトロールすると
言ってそのままにしてましたね、すみません

シンシア

仕方ないですよ。現実世界のほうが大変ですから

フク

ありがとう、シンシアさん…

シンシア

さぁ、一緒にモンスター退治に行きましょう!

フク

でも、レベルの差があるし
迷惑かけるんじゃ…

シンシア

なに言ってるんですか
フクさん!
あなたのレベル上げを手伝うために決まってるでしょ!

シンシアはギルドの外へと駆け出した。


フクも慌ててその後を追った。

彼女と一緒に行動することで、

少しずつ心の重さが軽くなっていくのを感じた。

二人で力を合わせ、次々とモンスターを倒し
ゲームの世界での友情が再び芽生えていった。

現実の悩みを一時忘れ、楽しい時間は
あっという間に過ぎていった。

シンシア

また一緒に冒険しましょうね、
フクさん。現実がどんなに辛くても、ここでは私たち、いつでも
ヒーローになれますから。

フク

はい。ボクも
もっと強くならないと

シンシア

ではおやすみなさい

フク

はーい。おやすみなさい

ログアウトしようとしたその時、
守は画面に目立つ通知が
表示されているのに気づいた。

「運営からのお知らせ」と書かれた

アイコンをタップすると、

画面に奇妙なメッセージが現れる。

地球防衛軍への入隊を希望しますか?

入隊?どういうことだろう…このゲーム自体が『地球防衛軍』って名前だったはずだけど

眠気のせいで深く考えることができず、
なんとなく「入隊を希望する」のボタンを押す。

画面に薄いエフェクトが表示されたが、
それ以上の反応はない。

なんだ、ただの演出か…

ふぁ~さーて寝るかな。

そうだ、
メールチャックしておこう

出会いサイトのアプリを開く。

最近メールをやり取りしている
英子さん(35)のプロフィールが
画面に表示される。

やっと約束までこぎつけたんだ。これを逃しちゃダメだよな…

それでも眠気には勝てず、スマホを
充電器に挿して布団へ潜り込んだ。

薄暗い部屋の中で、守の意識は
次第に遠のいていった。

その夜、彼のスマホの画面が微かに光り
画面に新たなメッセージが現れる。

「入隊確認完了。準備を開始します。」

守は気づかないまま深い眠りに落ちていた。

レジと恋とテラーディフェンダー
第一章 終わり

14話 忘れられない夜のオンライン(第一章 最終話)

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