新しい店長が赴任してから、
スーパーの雰囲気は一新された。

加えて、新しいバイトも入ってきたことから、
歓迎会を開くことになった。

スーパーの仕事が終わった後、
社員とバイトが集まって、
貸し切りの居酒屋へ向かうことになった。



守にとって、これまで飲み会やイベントは、
いつも避けてきたものだった。

しかし、今回は違う。盗撮事件の解決に
貢献した主役として、彼も天城も参加を
強制されたのだ。

普段なら絶対に断るはずの守だったが、
強いられた参加に内心戸惑いながらも、
どこか新しい自分を感じていた。

歓迎会が始まると、紗良はバイト仲間たちと
笑顔で会話をしていた。

以前なら、紗良のそばにはしつこく
付きまとう佐々木や森井がいたが、

今は彼女を囲むのは新しいバイト仲間たちだ。
紗良の笑顔に、守は自然と目を奪われていた。

楽しそうだな…(うっとり)

天城くん

守さん、本当に紗良のことが好きなんですね。

ちょっ、しーしー!声が大きい!

天城くん

あはは、守さん必死

おじさんをからかうなよ
(ドキドキ)

普段はほとんど飲まない酒を口にし、
守は少し酔いが回っていた。

トイレで用を足しながら、

天城の笑顔が頭の中で繰り返される

はは、
相変わらずイケメンだよな。

守はトイレで一息ついていたところ、
突然、男子トイレの扉が開き、

驚くべき光景が目に飛び込んできた。


そこに立っていたのは、



田中さん!?
ここ男子トイレです!

田中さん

ここ、共同なのよ

田中さんは守の背中にぴったりと寄り添った。

田中さん、酔ってるんじゃ…?

田中さん

ジー

や、ちょっと見ないでください!

田中さん

なによ、あの更衣室でバッチリ
見ちゃったんだから

そ、それは…!

守は焦り、早く場を離れようとするが

田中さんは守の手を掴んできた

ちょっと、何してるんですか?

田中さん

私、藤井くんに謝らなきゃいけないと思ってたの…あの時は動揺しちゃって、本当にごめんなさい

田中さんはそう言いながら、さらに

守の手首を強く握り、なんと彼をトイレの

個室に無理やり引きずり込んだ。

ちょっ、ちょっと待って!

必死に訴える守だったが、
個室のドアがガチャリと閉まり、
鍵が掛けられる。


狭い空間の中、田中さんはゆっくりと
上着のボタンを外し始めた。

田中さん

ふふ。お詫びの印なんだから

彼女の手が守の股間に伸びた瞬間、
守は驚愕しながら声をあげた。

た、田中さん!!ちょっと待ってください

守は必死に抵抗したが、田中さんはそれを
気に留めることなく、

さらに体を密着させてきた。

彼女の全体重が守に乗りかかり、
守は息も絶え絶えになっていった

お、重い

田中さんは守の耳元でささやいた。

田中さん

藤井くん、本当にありがとう…

え?

田中さん

私、店長に脅されていたの。

その一言が、密室の空気を一変させた。
守は耳を疑ったが、田中さんの顔は
真剣そのものだった。

脅されていた?

田中さん

昔ね、ちょっとエッチな動画に出ちゃって、それがバレたの

田中さん

それ以来、店長に時々セクハラされてたんだ

そうだったんですか…

田中さん

お尻触られたところ
見たでしょ?

はい、見ました…

田中さん

嫌いじゃないんだけどさ、
さすがに従業員の前ではね

田中さん…

田中さん

私がなんて呼ばれてたか、知ってる?

田中さんは少し小声になり、守の耳元で囁いた。

田中さん

デビュー作品にちなんで、
『肉便器』よ

AVでしか聞いたことない…(しかもゴリゴリの)

いつも明るく振る舞い、
仕事をサボることもあったけれど、

誰よりも掃除を欠かさない田中さんが、
あの店長にそんなひどい
あだ名をつけられていたとは

田中さん

私なんか、ここがお似合いなの。遠慮しなくていいのよ

ささやきながら

守の肩に身体を寄せてきた。

彼女の豊かな胸が近づくのを感じ、
守はどぎまぎしながらも、

田中さんの心に隠された痛みを感じ取っていた。

守はゆっくり田中さんを両肩をつかみ
目をみながら言った

田中さん、自分のことをそんな風に言わないでください

田中さんは…ちょっとエッチで、みんなを困らせることもあるけど、俺は知ってますよ!

田中さんが誰よりもきれい好きで、隅々までピカピカに磨いていること

休憩室も
店内も快適でいられるのは田中さんが毎日掃除をしているからです

そんな人が、に、肉便器なわけないでしょ!!

田中さん

藤井くん…

店長はもういないんです。だから、もうそんなことしなくていいんですよ

すると、田中さんの瞳に涙が浮かび、
次第にぽろぽろと流れ出した。

田中さん

そんなこと言ってくれたの、藤井くんが初めてよ…

オレ、あのスーパーに何年も勤めてますから

田中さん

嬉しい…

田中さんは感極まって守に抱きつき、
涙を流し続けた。

守は一瞬、動揺したが、
彼女の背中をそっと撫でた。

さあ、行きましょう。
みんな待ってますよ

田中さん

うん

田中さんは涙を拭いながら、ようやく微笑んだ。



2人は手を引き合うようにしてトイレを出た。

つづく

12話 揺れる想いの居酒屋ナイト

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