つづく
ハッ、ハッ、ハッ…
ボクがうなずくと、相手の男はジロジロとボクを眺めました
……!
この男…
以前会ったことのある男です
ええと、斎原先輩が言ってた
シンヤ?とかでしたか…
ふーん……
人狼かと思ったら人犬?
いや、一応狼か?
なんか、失礼なやつです
くすくす…
やれやれ、ここで一晩明かす気か?
ボクはまた小さくうなずきました
おいおい、ここは日本だぜ?
君が知ってるカリフォルニアの田舎じゃない
……!
なぜそんなことまで知っているのでしょうか…?
野犬として誰かに通報されたら困るのは君だけじゃない
人狼が…
人外が存在するということを、人間に知られると、他の者達にも迷惑がかかる
勝手知ったる者同士
助け合いだってできるだろ?
…だからコミュニティに入れと
言ったのさ
……
まあいい
その服を貸してみろ
どうするつもりかわかりませんでしたが、とりあえず咥えていた服を離しました
はぁ、泥だらけじゃないか…
まあ、仕方ない、今からこれは犬の散歩の落とし物袋だぞ?
……?
男が言うとボクの服はなぜか、ポリ袋になりました
よく見ると服なのに、どういうわけかそう見えてしまうのです!
私からあまり離れるなよ?
君はリードに繋がれているのだからな?
……!
ボクはリードに繋がれたことなんてありません
でも、何故か首に首輪やリードの重さを感じました
ふふふ、そうだよ、暗示だ
私は月を見ながらのんびりと犬の散歩をしているのさ
とりあえず、安全な場所に移動しよう
うう、屈辱です…
こんな訳のわからないやつの飼い犬として横を歩くなんて…
でも確かに日本の地方都市では一般的な姿です
誰も気にも留めませんし、警戒もされません
ボクはやむなく男に従うことにしました
途中で帰宅中のサラリーマン風の人とすれ違いましたが、何の警戒もされませんでした
どうやら男が「犬の散歩」と言えば「犬の散歩」になるようでした…
…だとしたらすごい暗示力です
なあ、君、トイレは大丈夫か?
私の部屋は汚さないでほしいんだが?
ううう…
くすくす…
冗談だ
男は見覚えのある建物に入っていこうとしています。
これはもしかしたら…
どうした?
行くぞ?
……
ボクは仕方なく男の横を歩きました
この建物…
相川さんが住んでいる所じゃないかな…
まさか会ったりしない…ですよね?
こっちだ
男は奥のエレベータまで進みました
エレベータは動いている様子で、暫く待つと…
……!
ドアが開くと降りてきたのは…
あ、こんばんはー
相川さん…
こんばんは
相川さんは男に軽く挨拶をして建物を出ていきます
こんな時間に一人で危なくないかな…
来い
ないはずのリードを引っ張られる感覚が首をくすぐりました
ボクは慌てて男と一緒にエレベータに乗り込みました
くすくす…
べ、別にジロジロ見ていたわけじゃアリマセン!
エレベータはかなり上の階まで上がり、ようやく止まりました
つづく