ここは……？ 絶命した所と同じ風景。木の洞の中。外の雪。違うのは、白い雪に映える鮮血と、いなくなった毛皮の少女。
……ん
ここは……？ 絶命した所と同じ風景。木の洞の中。外の雪。違うのは、白い雪に映える鮮血と、いなくなった毛皮の少女。
やっと目覚めたのか！
グルル（お前か？ お前が俺を死なせなかったのか？）
ああ、そうじゃ！ 今死なれては困る！ とっとと臭いを追うのじゃ！
ガル（やっと終われると思ったのによぉ、お前の手助けのためにまた苦痛を感じなければなんねぇのか？）
あの男はお主のようなイレギュラーじゃ！ もともとあの娘はこうなる運命ではなかった！
わん（ざまぁみろってことだ。自分でなんとかしな）。
それができぬから言っておるのじゃ！
わん（それに、俺には関係ない）
ああ、そうか。お主には関係ないのぅ。あの娘の命も、体も。
ガルル（どういうことだ？）
話すよりも物語を送る方が早い。とっととあの娘を探すのじゃ！
グルル（ちっ、しょうがねぇな）
濃い、魔術的な獣の臭いはあっさりと捉えることができた。
天の声から直接脳に刷り込まれる物語は、この世界に創造された時に与えられた己の役割と似通ったような、しかし最低な物であった。
大雑把な管理人の提示の下、モルタニス達は森の中にいた。草木も深いため馬から下り、迷路のようなそこをさまよう。
……同じ所回ってない？
ねぇ
うーん……。
あのさ、
シェーン、ここどこだかわかる？
なんで僕が女装しなくちゃいけないのかい！
声大きいわよ。男だとばれるから、黙りなさい。
いや、だから。
大丈夫。筋骨隆々の男だって、僕のテクニックで虫も殺せぬ花嫁になったから。
……はぁ。
どうやら彼らの間では、潜入＝女装だと相場が決まっているらしい。話すだけ無駄だと悟ったシェーンは、不慣れな格好に戸惑いつつ森の中を先導する。
多分、こっちの道じゃな
キャイン！
うぉっ！
突如、全力で走ってきた何かとぶつかった。狼だ。興奮している。このままでは、こちらの命が危ない！
さがって！ 二人とも！
狼相手に丸腰、しかもなれない格好。最悪な状況だ。しかし、ここは引けない。 守るべきものを守るのが、愛の狩人の務めだから。
あれ、ヴォルツヴァイじゃないか。
ガルル（だれだお前？）
お、丁度良いところに！ こやつは強盗捕獲大作戦の協力者じゃ！ わしが話すから案内するのじゃ。
わん（了解）。
ふむ……。二人とも、彼は僕らに協力してくれるらしい。ここは、彼についていこう。
ガウガウ（とっととついて来い）
わん（ここか）。
血の臭いを辿り、古い小屋の前に到着する。小屋の前には見張りと思わしき男が立っていた。
ぐるる（さーて、皆殺しに）
行きなさいっ！ シェーン！
えっ？
あ、んだぁ？
……。
ど、どうしたんだ？ お嬢ちゃん。
どうやら彼は、己を女だと思っているらしい。声を出すとばれるため、身振り手振りで、話せないこと、ここがどこだかわからないことを表現する。
そ、そうか。そうなのか。……よければ、今日はここに泊まっていかないか？
（嬉しいです）
おう！
（あの、これよかったらお礼に）
アップルパイかー、美味そうだなー。
（じー）
兄貴にやるのも持ったいねぇし、ここで食べちまうか。
いただきまーす！
