twitter300字ss様 9月のお題「雲」で
書かせて頂きました。
ジャンル:オリジナル
注意書き:やや鬱展開かも
スペース、改行を除く300文字
2017/09/02
【幸せの綿飴】



うちの綿飴は雲なんだよ


色とりどりの綿飴が
所狭しと並んでいる。



青は夏空の、黄は遊ぶ子供たちの上に浮かんでいたのさ



おじさんは瓶をひとつ取った。
薄桃色が香る。



これは少女の初恋の味




勧められるまま口に入れる。
甘い、
どこにでもある綿飴の味だ。



それはお嬢さんが幸せだから


おじさんは笑う。



もう行かなけりゃ


おじさんが向かった北の国は
紛争中。
幸せの綿飴は
人々の心を癒せたのだろうか。
なんて、
雲を見上げて思う。
何年か過ぎ。
おじさんが戻ってきた。



北の人は喜んでくれた?





もちろん


店には黒い瓶が並ぶ。



これは怨みと悲しみが詰まった雲さ


おじさんは笑う。



他人の不幸は蜜の味





この町1番の売れ筋なんだ


