俺の大声を聞きつけてか、麗花と麗花(ややこしいが気にしないこと)が駆けつけてきた。
俺は二人に構わず続ける。



知るかっ!!!


俺の大声を聞きつけてか、麗花と麗花(ややこしいが気にしないこと)が駆けつけてきた。
俺は二人に構わず続ける。



お前が今どうだろうち知るかよ!他人の気持ちなんてな、家族相手だってわかんねぇんだよ!





なっ――





お前の身体になってなんとなくだけど、わかったよ





常に成績優秀で、遅刻も忘れ物もしない。誰にだって平等に優しく差別はしない。かわいいものが大好きで、両親たちまでもそうだと思い込んでる。完璧で真面目で優等生の女の子――





疲れるよな、ずっとそんなんでいるのは





こんなめんどくせぇこと、他人に任せちまうのがいいよな





…………





初めは両親がプレゼントしてくれたピンク色のフリフリのスカート、嬉しくて着てた。
喜んだ両親はそれを機にかわいいものばかりプレゼントしたくれた。
――本当は、たまたまそのスカートだけ気に入っただけで、かわいいものなんて興味なかったんだよな





テストで百点を取った。クラスのみんなはすごいと言ってくれた。両親ももちろん大喜び。だけど、次第にみんなの期待が大きくなっていった――気付けば、周りは、お前はは、なんでも知ってるし、なんでもできる女の子という印象を持たれたた。
お前は、それに従わなければならない





どうして、転生しただけでこんな詳しく――





もう疲れた。誰かわたしの代わりに生きてくれる人はいないのか――って思ったんだよな





伝わってきたよ、すごく、読んでいたら





ま、まさか……





お前の自作小説。





て、てめぇ!勝手に読みやがったな!





……桜子…





――勝手なのはお互い様だろ?お前も勝手に俺を転生させたんだからよ





忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろーーーーー!


桜子は我を忘れて俺に掴みかかろうとする。さすがに今のこの体格差では敵わないので上手く避けた。



ちゃんと隠してたのに!わからないと思ったのに!





ベッドの下に隠すなんて、エロ本隠すのと同じ理屈で百パーセント掃除の母ちゃんにバレるもんなんだよ





……ま、あの時は不注意で転んだだけだが…・…


あの日――麗花の屋敷を後にし帰宅した日、俺は桜子の部屋のベッドの下で見つけた箱の中身は、一冊のノートだった。
勝手に見ることに多少の罪悪感を覚えつつも、俺は中身を見た。
そこには、明らかに小説とわかる文章がびっしりと書かれていた。
読んでみると、主人公の女子高生が桜子の状況に非常に似ていた。転生することまで書かれていて、そこで小説は途絶えていた。
そこからなんとなくだが、俺はこう思った。



――続きが浮かばなかったんだな





――っ!





主人公の女の子に、どう声を掛けていいか、どんな物語を与えればいいかわからなかったんだよな





主人公は――自分は、このままいなくなった方がいいんじゃないか





…………





だから、転生した。この先の物語を知るために。素敵な王子様でも来ないかと期待しながら





……別に王子様なんて期待してない。小説に一文付け足してみただけよ





そうか。まぁどっちにしろ、王子様じゃなくおっさんが現れちゃったわけだけどさ





……ねぇ、じゃあおっさんさ





わたしはどうすればいいと思う?





……どうしろって、簡単だよ





好きなように生きろ、期待になんて無理して答えんな、両親には猫かぶらずに素を見せて話せ





これを件で誰かに嫌われるかもしれない。でも気にすんな、誰かに嫌われることはあっても、誰にも好きになってもらえないことはないから





ま、既に俺のせいで若干関係が変わってるのもあるし……





……え?





いいやなんでも。とにかく、生きたいように生きろ、まだ小学生なんだからよ





……でも。





わたしに生きろってことは、あなたは死ぬってことなのよ





あぁ。わかってるよ。……でもよ、どうせ元々死んでたんだろ?ちょっとしたボーナスタイムを楽しんでいただけに過ぎねぇよ





バカなのね、あなた





バカだよ、俺は。





あ、あと麗花も――





……何よ。……同じようなことは、こっちのおっさんに言われたわよ





おっさんって……





三人仲良く、元気でな





三人……って





さて、僕らはそろそろいくよ。たぶん、リサのことなら、そろそろ魂が元に戻るように仕込んでいるはずだ





おお、そうか……。抜かりねぇな、アイツ


俺らは二人と対面する。



元気でな





元気でな


同時に言うと、俺たち四人の足下からうっすらと光り出す――光は徐々に身体全体を包み込んでいく。



――待ってっ





こんなこと巻き込んでごめんなさい





こんなことになってごめんなさい





でも、ありが――


俺の意識はここで終わった。
