あの後、放課後は沙希と帰って、自宅前で別れて、特にすることもなくだらだらしてたら。
あの後、放課後は沙希と帰って、自宅前で別れて、特にすることもなくだらだらしてたら。
気付けば外は暗くなってしまっていた。



夏月


しかしそんな俺の自宅での一時のくつろぎは、往々にして阻害される。
一人じゃないからだ。
俺はテレビから視線を外して返事をした。



何?





何じゃないわよ、テレビなんて見てないでお皿並べてちょうだい


台所から響く姦しい声が、自分でもだらしないと思える俺の返事を叱責した。



はいはい


下手に逆らうとめんどくさいことになるのがわかってるので、俺は母の言葉に素直に従う。
すぐに料理は食卓に並べられ俺と母は向い合って座った。たった一人の家族様と。
夕食が始まる。



そういえば、最近沙希ちゃんとはどうなのよ、仲良くしてもらえてる?





うん、普通に





あんな可愛いくていい子、滅多にいないんだから、大事にしてあげなさいよね





はいはい


少しうんざりしつつ答える。
別に反抗期ってわけでもないけど。なんとなくの癖で、ぞんざいな返事をしてしまう。



あ、そうだ。明日沙希ちゃんを夕飯に招待しなさいよ。お母さん腕によりをかけちゃうから


毎度のことなので特に驚かないが、この人の提案はあまりに唐突だ。
というか、思いつきでものを言う。



あんまり頻繁に呼ぶとあいつ萎縮しそうだけどな





あら、そうかしら


いくらか牽制気味に投げた返事だったけれども。
実際に少し反省したような顔をされても、俺は困ってしまった。



まぁ訊いてみるよ





頼んだわよ


気を取り直したように母は微笑む。
まだ来るとも決まってないのに、すでに楽しそう。
沙希を気に入っているのだ。
沙希が母を好いているかは知らないが。
まぁ嫌ってはいないと思うけど。沙希は見たまんま他人を嫌うことのできない性格だから。
俺は母の作ったきんぴらごぼうを噛みながら、沙希をどう誘ったものかと考えていた。
