僕は咄嗟に美香の身体を引っ張って玻璃さんに背を向ける。
僕は咄嗟に美香の身体を引っ張って玻璃さんに背を向ける。



お前、どういうつもりだよ……! 無茶ぶりにも程があるだろ……!





大丈夫だよケン君、もっと自分に自信を持って!
いつもの調子でババーンと馬鹿みたいにどうしようもない発言をしてやって!





それ褒めてねえよな……。
というか、どうして僕がそんなことしなくちゃいけないんだよ





だって、そういうキャラで売っていこうって決めたじゃない





そりゃお前が勝手に決めたんだろ!





玻璃ちゃんと仲良くなるチャンスだよ!
友達百人の二人目!
大丈夫だってー。滑ったら私がうまく持ち上げるからさー





……全然納得は出来ないが……まぁ、分かったよ


しかし相手が悪すぎやしないだろうか。
ただでさえ表情の硬い玻璃さん相手に滑ったりしたら、教室どころか学校全体が氷河期一直線間違いない。
そしてその後はとてつもなくギクシャクとした関係が続くのだ。



…………


……いや、どうせ僕は友達なんて作らない。
だからまぁ、ここで多少恥ずかしい思いをしたところで、後に何も残らないのなら一緒かもしれない。
僕は無理矢理そう納得させて、美香と共に玻璃さんの方へ振り返る。



……?


これまた子犬のように首を傾げる玻璃さんに向けて、僕は大げさに口を開く



じゃあ、玻璃さんのダーツテクニックを称えて……





その能力を
『夢中の核心(ニュークリアデッドネス)』
と名付けよう!


過去、こういう発言をした際、大抵の相手は口をぽかんと開けて反応に困っていた。
いや、僕自身は物凄く恰好良いと思っているのだが、かなしきかな僕のセンスについて来られる人間はほとんどいない。
美香が軽くあしらってくれる程度である。
しかしこのとき、玻璃さんは口をぽかんと開けなかった。



……香田君、なかなか良いセンスを持ってるのね


相変わらずの無表情を崩さず、そんな予想外の言葉を返してきた。



でも、残念


そして、玻璃さんはその口から、もっと驚くべき台詞を放つ。



この能力にはもう名前があるの


玻璃さんはダーツを僕と美香に見せつけるようにして構え、片方の腕で顔を隠しながら言い放つ。



『不敵の均衡(ジャイロジャストジャスパー)』。
それが私の、全てを貫く不屈の意志!





!?





!?


僕と美香は口をぽかんと開けた。



!?


