オリエンテーションやら教科書の配布やら、本日の行事は一通り終了し、後は帰宅するのみとなった。
オリエンテーションやら教科書の配布やら、本日の行事は一通り終了し、後は帰宅するのみとなった。
さて、帰るか……と思い席を立ったところで、



ケンく~ん


と、美香の僕を呼ぶ声が聞こえたので振り向くと、



…………


玻璃さんが居た。



…………





……あれ~~~ッッッ!!??
なんでッ!?


瑠琵 玻璃。
自己紹介のとき、ダーツで蜂を仕留めた白髪の彼女。
美香だと思って振り向いたら玻璃さんだった。
この衝撃的展開に僕の脳は硬直する。
たったこれだけのことで人間は固まってしまうのか……。



断じて僕がコミュ障だからということではない


と、自分自身に弁解していると、玻璃さんの後ろからひょっこりと美香が姿を現した。



にゃはは~、ケン君驚いた?
……って、ちょっとケン君、なんで硬直してんの?
驚きすぎでしょそれ。
死後硬直?





……いや、まだHP1くらい残ってる





死ぬ寸前!?





ツッコミ入れる力も無い……





ケン君コミュ障過ぎて私心配だよ……。
大丈夫だよ、玻璃ちゃんは全然怖くないからね! ほらほら~


言って、美香は玻璃さんの頬っぺたをムニムニと撫でまわし始めた。



…………


玻璃さんは嫌がるそぶりもなく、なんか猫だか犬みたいに気持ちよさそうな感じにしている。
小動物かな?



というか、仲良くなるのが早すぎる……。


いつの間に友達になったのだろう……。
そういえば美香と玻璃さんは席が近かった。
だから話す機会があったのだろう。
しかしそれでも今日知り合ったばかりでここまでやれるものなのか。



これがコミュニケーション能力の差か……


否、それが美香の美香たる所以なのかもしれない。



香田君


もにもにと頬っぺたを撫でまわされながら、玻璃さんは口を開く。



香田君は、美香さんの幼馴染だって、聞いた





え、あぁ、どぅふ、ん、う、うん、そうだよ


超絶に吃る僕。



仕様です


しかし玻璃さんはそんな僕が不思議だったのか、これまた小動物みたいに首を傾げる。



これから一年、よろしくね





う、うん、こちらこそよろしく、瑠琵さん





……玻璃で良いよ?





え、えぇ? あ、あぁ、わかったよ





し、下の名前で……!?
おいおいマジかよ!
僕にはちょっとハードルが高いんじゃないか!?
女の子の名前を下で呼ぶなんて!





美香はノーカン





なんか不愉快な感じがするけど気のせいかなぁ……





まぁいいや。
というか、ケン君が人の名前をしっかり覚えてるなんて珍しいねー





まぁ……ね。ダーツが印象的だったし


言わないが、白い髪のことも。



玻璃ちゃんダーツ超格好良かったよねー!





そう?


相変わらずの無表情であったが、どことなく嬉しそうな雰囲気がつかみとれた。
そんな様子に、僕の中にある天秤は揺れ動いた。
友達百人。
そんな重荷には耐えられないだろうが、しかし一人くらいなら……。



……高校デビューという言葉もある。
今朝の美香ではないが、そろそろ僕も、大人になっちゃうかな~?





ケン君だったら、玻璃ちゃんのダーツテクニックに、なんか物凄い技名とか付けそうだよねー





技名?


唐突な美香の言葉に、玻璃さんはまた首を傾げた。



…………


僕は身体が凍りつく。



うん、ケン君は超恰好良い技の名前とかを考えるのが得意なんだよー。
ね、ケン君は玻璃ちゃんのダーツテクニックにどういう名前を付ける?





…………





む、無茶ぶりだ~~~~!!!


