今日一日が無事に終わり、
我々は屋敷に戻った。
六人で一台の車に乗って……。
窮屈だ。
何が窮屈って、
白石が助手席から
ずっと私を睨んでいる。
私が少しでもウトウトしようものなら
大激怒。
どうやらヨダレを気にしているらしい。
「あの……、白石。
前を向いていた方が良いのでは?
ずっとそんな体勢でいると、
首が痛くなりますよ?」
「いえ。気になさらずに」
滅茶苦茶気になるんだよ。
それより隣!
運転席を見てッ!
黒川が運転しながら
饅頭を食べているよ!
起こるか起こらないか分からない
未来を気にするより、
今起こっている現実に目を向けろー!
青田は私の隣で
新聞を広げて読んでいますし。
肘がガスガス当たってきて
地味に痛いですし。
赤井と桃は読書中。
さすが進学クラスは違いますなー。
屋敷に到着すると、
顔中に巻かれた包帯を取ってもらった。
わーい、自由だー。
怨念キャラよ、さようなら。
久しぶりに食べるまともなご飯。
「美味ッ!
黒川が作ったご飯、
滅茶苦茶美味ですよ!」
「良かったな」
夕食を食べ終え、私は風呂に入った。
今日一日の出来事が
あまりにも多すぎて疲れた
よし。
アイスクリームを食べながら
テレビを見て、元気をチャージしよう。
キッチンの冷凍庫から
アイスクリームを取り出し、
テレビの置いてある部屋へ
行こうとすると、赤井がやって来た。
「お嬢」
「何ですか?
赤井もアイスが欲しいの?
残念ながら、これが最後の一個です」
「違うって。
報告会があるから
お嬢を呼びに来ただけだ」
「ん? 報告会?」
仕方がないので
アイスクリームを持ったまま、
赤井に連れられて
『報告会』とやらに顔を出した。
赤井と私が席につくと
『報告会』とやらが勝手に始まった。
何これ?
アイスクリームを食べながら
聞いているだけで良いのかな?
「赤井君、桃。
お嬢の初恋の相手に
相応しい奴は見つかったか?」
あー。
そう言えば、そんな事をしていたっけ。
すっかり忘れてた。
「今のところ、
三年生の先輩の中から三人。
これが三人の資料だよ」
「……」
資料が全員に配られ、
皆、真剣に読んでいる。
どうでも良い。
勝手に進めているが良い。
私は白石の為に
一肌脱がなければならないので
忙しいのだよ。
「なるほど。
では、この三人で決定。
次の作戦へ移ろう」
ハハハ。次の作戦だって。
…………。
一体何をするつもりだァァァッ!
「では最後に。連絡事項がある者は?」
「はい」
お。白石が手を挙げた。
まさか白石、
自分が学園で人気があることを
皆に発表するのか?
ウフフ。
「一時間目、
お嬢が居眠りと
教師に向かって反抗をしました。
あと、化学の宿題を
提出していないのは、
お嬢だけでした」
うわぁぁ!
今、関係ないよね?
何でここで報告しちゃうの?
アイスが……、
アイスクリームが溶けてしまう……。
「よし、分かった。お嬢以外、解散」
皆、行かないで。
行ってしまわないで……。
何? この報告会。
毎日開催されるのですか?
自由の先に、
黒川地獄が待っていた……。