変わり果ててしまったイザナミの姿にイザナギは恐怖し、一目散に逃げ出した。
そんなイザナギの反応に激怒したイザナミは、ゾンビのような醜い女従者に
変わり果ててしまったイザナミの姿にイザナギは恐怖し、一目散に逃げ出した。
そんなイザナギの反応に激怒したイザナミは、ゾンビのような醜い女従者に
イザナギを殺してっ!!
と命じて追わせてきた。
そこでイザナギは、逃げながらツル草の髪飾りを解いて女従者に投げつけた。
すると、たちまちツル草が伸び、ブドウが成った。女従者たちはブドウに食らいつく。しかしそう時間は稼げず、また追って来た。
それならと、今度は頭に挿していたクシの歯を折って投げつけた。
すると、歯はみるみる大きくなり、巨大なタケノコになって道を塞いだ。女従者たちは、またそれに食らいついた。
どんだけ腹減ってんだよ・・でも、出口までもう少しだ。これなら逃げ切れる!
そう思った矢先、後ろからイザナミの発狂した声が聞こえた。
お前ら何してるのっ??
使えない!使えない!使えない!!
雷神!!イザナギを殺してっ!!
軍もみんな加勢してよっっ!!
イザナミは自分の腐った身体から生まれた8体の雷神と、黄泉の国の1500もの大軍を差し向けた。あまりの軍の多さに、イザナギは血の気が引くのを感じた。
ウソだろっ!?
こんなにたくさんいたのかよっ??さっきまで誰も返事しなかったくせに!!
クソ、どけっっ ・ ・ ・ ・
あと少しっ ・ ・ ・ ・ ・ !!
イザナギは十拳の剣で後ろから追ってくる軍勢を切り払いながら、前へと進んだ。後ろからイザナミの声が聞こえてくる。
イザナギ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 私の事、愛してるって言ったじゃない。
あなたも死ねば私達、ずーっとずーっと一緒にいられるのに。
やめてくれ!死んでたまるか!まだ国づくりは終わっていないんだ!
つーか、普通に死にたくないっ!!!
イザナギは全力で走り、やっとの思いで黄泉比良坂が見えるところまで辿り着いた。あの坂を登れば地上だ。死者は追って来れない。
この距離なら逃げ切れる!!
と、安堵したその時・・・
・ ・ ・ ・ ・ ・ っっうわっ!
足を誰かに引っ張られ、イザナギは大きく転んだ。彼女が差し向けた雷神だ。
痛ってぇ!!離せっ!!!!
イザナギはとっさに目の前の桃の木から実を取り、雷神に投げつけた。
雷神は奇声を上げてのたうち回った。どうやら桃が苦手なようだ。この隙に、イザナギは雷神の手から逃れ、さらにまた2つの桃を取り他の大軍にも投げつけた。
すると、たちまち大軍も退散してしまった。
っっ助かった ・ ・ ・ ・ ・ ・
もう追っ手はいないよいうだ。イザナギは安堵し、桃の木に話しかけた。
ありがとう、桃の木さん。
お礼に『オホカムヅミ』って名前をあげる。
これからも人が困っていたら助けてあげて。
桃の木に通じたかどうかはわからないが、サワサワと揺れる葉に、『いいよ』って返事をもらったような気がした。
しかし安心したのも束の間。すぐ後ろからイザナミの声が迫ってきた。
イザナギっ!足が止まってるわよ!!
うわっっ!!
追手を失ったイザナミが自分で後を追ってきたのだ。
早っ!!くそ ・ ・ ・ 追いつかれる ・ ・ ・ ・ ・
イザナギは黄泉比良坂まで走ると、1000人がかりでないと持てないような巨大な岩を見つけ、思いっきり押し転がした。大岩が黄泉の入り口までゴロゴロと転がって行く。道を塞がれまいと、イザナミはさらにスピードを上げた。
頼む!間に合ってくれ!!
イザナギは祈った。
鈍い音が響いた。
岩の向こうでイザナミがぶつかったのだろう。岩の隙間からすすり泣く声が聞こえて来る。
酷い ・ ・ ・ イザナギ ・ ・ ・ 酷いよ。愛しているのに ・ ・ ・ あいしてるのに ・ ・ ・ ・ ・ ・
岩を爪で掻いているのだろうか。ガリガリと気持ち悪い効果音が響く。
・ ・ ・ ・ ・ ・ イザナミ ・ ・ ・ ごめん。
君は死者。僕は生者だ。それなのに君を迎えに来て ・ ・ ・ 変な期待させちゃって ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ 一緒にいたいだけなのに ・ ・ ・ ・
・ ・ ぐすっ ・ ・ ・ ・ ・
僕だって君を愛してるし一緒にいたいさ 。でも、わかるだろ?死者と生者は一緒になれないんだ。
ひどいよ ・ ・ ・ ・ ・
ごめん。許してくれ ・ ・ ・
ひっく ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ っく
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ やだ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ 許さない。
イザナミ ・ ・ ・ ・ ・ ・
許すわけないじゃない ・ ・ ・ ・ ・ ・ 絶対に ・ ・ ・ ・ ・ ・ 絶対に許さない ・ ・ ・ ・ ・ ・ 許さないわよ。許さない ・ ・ ・ ・ 許さない ・ ・ ・ ・絶対絶対許さない ・ ・ ・ ・
彼女は岩をガリガリと掻きながら不気味に呟いた。
そして一瞬の沈黙。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ふっ ・ ・ ・ ・ くすくすっ!ふふっふふふっふふふふふっっははははっ!!
今度は狂ったように笑い出した。めちゃめちゃ気味が悪い。
・ ・ ・ 何がおかしいんだよ。
わかったわ!!!わかった!イザナギの大好きな人間がみんなこっちにくればいいんだ。
ね?
そうでしょ?
ふふっ、だから、私、殺してあげる。
あなたの国の人たちを毎日1000人殺してあげるの!!呪ってあげるっ!!!
・ ・ ・ ・ ・ は?
ふふふっふふふふふふふ ・ ・ ・ ・ ・ 毎日毎日毎日毎日毎日みんな殺してあげるの。
いっぱいころすの ・ ・ ・ あははっ ・ ・ ・ ・ ・ ・
イザナミ ・ ・ ・ ・ 違うよ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 何でそうなるんだよ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ そんなの君らしくない ・ ・ ・
だって ・ ・ ・ ・ ・ みんなのこと幸せにしたいって言ってたのに・ ・ ・ ・ ・ ・
イザナギの頭の中で、あの日のイザナミの笑顔が走馬灯のように駆け巡った。
しかし、ココにはもう、そのイザナミはいなかった。
イザナギはようやくイザナミに背を向け、一歩前へと踏み出した。
わかったよ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それなら僕は毎日、1500人の赤子を生ませる。
君はそこで日々幸せな人間が増えていくのを見ていればいい。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ コロス ・ ・ ・ ・ ・ コロス ・ ・ ・ ・ ・
ごめん ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ さよなら、イザナミ
・ ・ ・ ・ ろす ・ ・ ・ ・ こ ・ ・ ・ ・ ・
ろ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ふふっ ・ ・ ・ ・
イザナギは振り向かずにその場を立ち去った。
こうしてイザナミの呪いによって人間には寿命ができ、1日1000人が死ぬことになった。
そしてイザナギの神力で、1日1500人が産まれることになった。