メントルと話している時だった。突然ドアが叩く音と乗務員らしき声が聞こえてきた。
 

 僕は少女を自分の部屋へと招き入れた。

メントル

何もないんだね


 嘲笑してくるかのような声で言ってくる。
 正直うざいと思う。

スセソル

悪かったね、何もなくね。そういう君は豪華なのか?

メントル

あぁ、豪華だとも


 ふと疑問が浮かぶ。僕の部屋よりも豪華な部屋を与えられているのに本当に無一文なのだろうかと、そう疑問に思ったが先程の行動でかき消されてしまった。

メントル

お互い自己紹介しない?

スセソル

突然どうしたんだ?

メントル

偽名でも良いからさ、君とか呼ぶのは隔たりがある感じで嫌だしさ


 彼女のことにも一理ある。名前も知らずにこれから行動するには不便だ。偽名……か。

スセソル

僕の名前は……スセソルだ。

メントル

それ本名?


 明らかに分かっている顔で聞いてくる。悪戯好きなのか。

メントル

私の名前はメントル


 メントル。スペイン語で助言者を意味する単語。あえてそれを選んだのか、それとも……。

スセソル

これからよろしく、メントル。

メントル

よろしくね、スセ君


 

スセソル

スセ君?

メントル

略称だよ。スセソルは言いにくいからね


 まぁ良いか。さて、これからどうするべきか。手持ちは残り90万と得体の知れない少女一人。
 ……誰か殺すか?いや、現実的じゃない。

メントル

ねぇー早くシないの?

スセソル

は?お前は何言ってんだ?


メントルはベッドに仰向けに倒れると両手を広げたまま動かない。

メントル

あ、もしかして――

スセソル

僕はお前とするつもりはないぞ

メントル

……なぁんだ。つまないの


 全く、この少女は何を考えているかまるでわからん。

スセソル

それともお前は僕としてほしいのか?

メントル

もう気分が冷めちゃった


 気分が、ねぇ。どうせ何か企んでるに決まっている。警戒しないと。

メントル

ところでスセ君はなんで拳銃なんか胸のところに持ってるの?


 ――ッ!なんで分かったんだ?

スセソル

どうしてそのことを?

メントル

その拳銃重すぎてスーツにしわが出来てるよ


 マジかよ。鏡で確認した時には大丈夫だろうと思ったんだが。

メントル

君、面白いね


 くすくすと笑いながら見下している。

スセソル

そういえば聞きたかったんだがメントルは飛行船についてどこまで知っているんだ?

メントル

ぜんぶ


 はい?全部だと?

スセソル

教えてくれ。僕が知らない情報を

メントル

まず、この飛行船には暗黙の了解がある。1つはジョーカーに気をつけること、2つ目は死体を漁るな

スセソル

ジョーカーに気をつけることってのは?

メントル

ジョーカーってのは毎回飛行船に乗る部屋無しの住人。関わって良いことが起きたことが無いから気をつけること。

スセソル

死体を漁るなは?

メントル

死体を漁るなは死体が崩れて汚れるのを防ぐ為

スセソル

……他には無いのか?

メントル

今教えられるのはこれくらいかなー


 今はね。あとで教えてくれることに賭けるか。

すみませーん。ルームサービスです。


 メントルと話している時だった。突然ドアが叩く音と乗務員らしき声が聞こえてきた。