ガタタン!

住宅街に隣接した夕暮れの駅の構内は混雑して、人通りが激しかった。
佳代は人の流れに乗るように電車を降りると、ホームを階段に向かって歩いていく…

ふう、なんかドキドキしたわー

マルタイのマンションやもんな…

しかもお隣さんて…
ちょっとびびったわ、さすがに…

しかし入りやすぅなったかな…
結衣ちゃんには悪いけど、都合良かったかもしれんわ…

…なんて、ホンマ、ウチ、仕事の鬼やわ

…ごめんな、結衣ちゃん…

ただいまー

おー、帰ったか
ワシも今さっき帰ってきたところや

室内には中年の男がいた。佳代の父親である。彼はキッチンで食事の準備をしている様子。
佳代も荷物を置くと、すぐにそれに倣った。

今日は学校、どやった?

父親の言葉に佳代はちょっと薄ら笑いを見せる。

あー、マルタイのマンション入ってもーたわ

マルタイ、とは対象者の意味である。
父親は目を丸くした。

はぁ?
あんま、近づきすぎるなや?

偶然やねん
お友達のマンションがな、例のマンションやってん

えぇ…

とりあえずばんごはん、しよかー

せやな
腹が減っては戦がでけん

しかし、友達かー
お前もいっちょ前に女子高生してるやん?

えへへ
ホンマ、これは感謝してるねんで?
おとーちゃんについて来てよかった思てんねん
里おったら青春どころやあれへんわ

青春、なぁ…

なあ、佳代、おかんの敵討ちなんぞ、考えんでもええで?
今どき桃太郎さんやあるまいし、鬼退治もあれへんわ…

はぁ?
何言うてんねん?
おかんはおかんや
ウチはこの仕事が好きやねん

ごはん、この茶碗でええかー?

うん、あんま、山盛り入れんとってや

はは、ダイエットって柄やないやろ?

太ってもーたら動けんくなるやろ

やれやれ、お前は仕事の鬼やなー

退治する方やけどな!

この親子、実は某忍者の血を引く一族の末裔である。その身体能力を生かして、人間に紛れている有害な人外の存在を狩る仕事を政府組織に任されているのだ。

かつて戦国時代にとある忍者の一団が傷つき、時の仏教の総本山で匿われたときに、その技術を見込まれ、密教の秘術を伝授され、多くの鬼、妖怪の類を狩り出す仕事に従事した。

戦国時代が終わってからは幕府に、江戸時代が終わってからは明治政府に、その管轄は移っていった。

そうして彼らは現在に至るまで、鬼、妖怪などと呼ばれる人外の存在を闇から闇へと葬っていったのだ。

…なあ、おとーちゃん…

ん? なんや?

もしも、やで?

人外が人間と同じくらい、優しかったらどないするん?

ワシらは人殺しとちゃうねん
鬼殺しや
有害な鬼や化け物を退治しとるんや

お前が人間やと思ったら、それでええ
それは人間や…

人間かぁ…

犬上くん、調査書には上がってなかったけど、なんか普通に人間っぽいねんな…
臭いは間違いなく人狼やねんけど…

うーん、ノーマークってことは
まだ正体が知られていないってことかな?

上に報告するべきかどうか、悩むわ…

あの子…
ホンマ、よう、わからんわ…

人か、鬼か…
見極めは大事やで?

…うん!

まあ、お前のこっちゃから、心配はないと思てるけどな

うん!
まかせといてや

とりあえずは様子見ってことにしておこ…

第8話 終

第8話 5 元気少女、帰宅する

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