……。


 霧の向こうに映る帆船を認め、思わずしげしげと観察する。

 あの辺りには、海も河川も無い。

 と、すると。

……。


 船上に蠢く人々の影に、口の端が上がる。

 あの船はおそらく、この『禁域』に囚われた人々を次の場所に運ぶ船。

……。

 自身の任務にも、終わりが見えてきた。

 消えゆく影に、捺(なつ)は大きく手を振った。