暗躍展覧会 その7



さて、作戦会議だ。





ん……んう……?





ひっ また暴れだすのか!?


スネイクがフラフラと立ち上がったではないか!



あ……? リチャード? ここは……牢屋はどうなったんだ……?





……正気のようだな。気絶すると、一旦暗示は解けるのか。





操られていた……!?





まじか。リチャード。すまねえ……あんたを傷つけるなんて、俺は……





いいさ。術相手ではどうにもならん。





俺、俺……もうそんな術ぜってーに、かからねえから……


スネイクらしい、必死の表明。それを聞いて、リチャードは顎に手をやり少し黙考する。



……いや。それはどうかな。今だって、単に一時的に効果が切れているだけだろう。





完全に解くためには、そして俺の作戦では、最低でももう一度お前に術にかかってもらわねばならんと思っていたが……





スネイク、お前が嫌なら作戦を考え直すが――





大丈夫だ。





!





なんでえ、作戦があるのかよ。だったら先に言えよ……だったら術の1つや2つ、いくらでもかかってやるよ。


打って変わったように潔く……!



……助かる。代わりと言ってはなんだが指揮は任せてくれ。





はは、チームワークってやつか。羨ましいな。





…………


最上階。薄暗い部屋の中心で、黙念と佇む男!



物音! 来たか。





敵は三人……





暗示途中の者、術のかからぬ忌々しい者もいるが、いずれにせよ無力化は可能なはず。





先手で暗示をかけ、その後の動きを見るとしようか……!





うおおおおおお!





愚かな! 駒から来たか! では操ってやろう。





――――!!





うごおおおおおおお!





そうはさせるか!!





二手。ふん、想定済みだ・・・!


その方向は手繰り屋の真横。直線的に向かったスネイクを囮に、リチャードは横に回っていたのだ!
しかし! 敵のほうが一枚上手。視線をスネイクから離し、素早くリチャードを見つめる……!



うぐっ……ぐぐぐぐぐ……!


さすがは怪しげな妖術を生業とするもの。この程度の絡め手では対応されてしまうか……!



くらえ!





どこを狙っている……!


リチャードが苦し紛れに放り投げた板切れも、安々とかわされてしまう!



だが! 俺たちは三人だ……!





さしものお前も3方向からの攻撃には――





ふん、


何ということだろう、何ということだろう。手繰り屋は超高速で回転をしだした。どの方向にも目線が届いてしまう……!



ぎゃあああやめろおおおおおお!





く、苦しい……! がっぐふっっっ!!





――――――――


さながら三面鬼……! 誰一人視線を外すことができない……!



やめろ、やめろ、やめろおおおおお! うおお、おおおお!





ククク、殴れ殴れ! そのまま己で消耗してしまえ……!





その間にこちらは、術を完成させてしまうぞ……!





ぐおおおおお、く、くそおおお……!


ああ、ああ、やはりこの邪悪な呪術師には誰も敵わないのか……!
その時。先程リチャードが投擲した板切れが。大きなカーブを描いて、天井まで跳ね上がっていた板切れが――
依頼請負人の頭頂部をしたたかに、はたき倒した――



え? な!? 痛、痛い……! ものすごく痛い……!!?


取り戻す正気……!
その間、リチャードは魅入られたように手繰り屋の瞳から目を離せない。



ぐ……あ……あ…………





や、やばい!


当て身……!



ぐふっ……ごほっ、ごほっ、助かった……!





小賢しいやつ! だが、駒の準備は終わっているぞ。





――――





忠実な駒よ、この二人の息の根を止めろ……!


ナイフをギラリと輝かせ、こちらに特攻するスネイク……!



ククク、あがきは無駄に終わったな……牢屋の時と同じように、可愛がってもらえ!


高らかに笑う手繰り屋。
リチャードは!? 正気を取り戻したものの、呻き、地に転がっている。依頼請負人は!? スネイクの突撃に、身をすくめたまま動けない……!
このままでは……!



どうかな? ぐぐ……同じようには、いかないかもしれないぞ?


転がった姿勢のまま、手繰り屋の足首を掴む!
そう、牢屋のでの攻防と大きな違いが一つ。それはこの場に倒すべき相手がいること……!



ム、離せ……!


リチャードを足蹴にする! しかし意地でも離さぬリチャード。
そうこうしている間にスネイクは向かってくる。リチャードを攻撃しに。



貴様、もしや……!





そう、とも……! スネイクの特攻はとんでもないスピードだぞ。とてもじゃないが回避なんてできないよなあ!





うおおおおおおお!





ま、巻き添えを、いかん、このままでは! ええい――――ッ





竪琴を落とした哀れな羊使いの末路


怪しげな言霊が部屋を支配し――スネイクはビクリと身を震わすと……



んがっ――――


スネイクは意識を失った……!



よ、よし、これで……!


しかし悲しいかな。彼は忘れていたのである。
スネイクは、直前までとんでもない前傾姿勢で突撃してきたのだ。たとえ意識を失い、それ以上の力はかからないとしても。
それまでの運動エネルギーは、簡単に消えたりはしないのだ――



やめろ、ば……ばか! ぶつかるお前!





ッッ(衝撃に身を備え歯を食いしばる)


スネイクは手繰り屋、リチャードに激突した。勢いはそこで止まらず、三人はもつれ合ったまま壁に激突した――
続く
