ガーディアンゲートから前進するハル達は、目があちこちに飛んでしまう。初めての迷宮に興味がいくのは自然なことだった。





　迷宮の壁面は洞窟のようにゴツゴツとした岩があり、床は歩きやすく平らな土と石だ。数十年もの間、冒険者に踏み固められてきたに違いない。


　少しのカビ臭さが鼻をつく。地上よりも僅かに肌寒さを覚えるが気になるほどではなかった。




　進む先は一本道で、真っ直ぐ奥に延びている。道が続いているであろうその先は、暗闇で何も見えなかった。

　先頭はダナン。その右にハル、左にはジュピターが歩く。フットワークよく動いて三人が武器を振り回しても、お互いが邪魔にならない距離感。迷宮の通路はそれぐらいの広さであり、その広さにはこの六人という数が最適なのだ。

　ロココの魔物の感知は調度視界の少し先程度。

　魔気のコントロールに長けた者を魔操者とコフィンが言っていた。その魔操者が居ると居ないでは、魔物との遭遇時、一呼吸の時間が得られる利点は大きい。

　ジュピターが目にしたのは分かれ道だった。直進する道と右手に曲がる道。どちらも例によって少し先は暗闇だ。

　ダナンが再び先頭を歩き始める。



　目の届かぬ先の暗闇は自然と不安を増殖させる。人間の抗えぬ本能であり、自己防衛機能とも言えるだろう。

　不思議なほど静かなこの通路は、自分達の足音しか聞こえてこない。重苦しく圧し掛かってくる魔気の感覚を身に受けながら歩を進める。

　直進した先には、更に下へ続く階段があった。



　地下二階層へ続く階段だ。階段の先を覗き込んでも、吸い込まれそうな暗闇しか見えない。

　この先は一階層よりも強い魔物がいる。まだここの魔物とも戦っていないのに挑戦するのは明らかに早すぎるのだ。

　いきなりの下層への階段に息が詰まり、ユフィ以外は周りが見えていなかった。右手には通路が伸びていたのだ。

　ロココが声を上げたのは魔物が接近してきている知らせだ。抜剣するジュピターはまだ見えぬ敵からの攻撃に備え、ダナンとハルに激励を飛ばした。

　ユフィが指示を飛ばし時、視界の先の暗闇から人影が現れた。しかしその人影には首から上がなく、左手には大剣、右手には生首を持っている。

　どう感知したのか理解不能だが、ハル達の存在に気付いたようだ。