門兵が身構えると、通行人も騒ぎに気付き始めた。視線が集まる中、不意に攻撃されたダナンが言い放つ。
門兵が身構えると、通行人も騒ぎに気付き始めた。視線が集まる中、不意に攻撃されたダナンが言い放つ。



なんだそりゃ?
このダナン様には
全然効かねぇぞ。





痛ってぇ~っ!
なんて蹴りだ。信じられねぇ。
痛すぎる!





今の凄く痛そうだけど
大丈夫なんだ。





モチロン。
鍛え方が違うからな。





うえっ!
胃液が上がってきやがった。





頑丈なのは良い事よ。
格好良いとは言えないけど。





おお、なんて頑丈さ。
頑丈って能力は、
恰好悪いっすけど凄いっす。


さり気なく酷い事を言うユフィとハル。蹴られた腹部が真っ赤になっているダナンは、それでも悠然と立っていた。



でも、厄介事に首を
突っ込むのは良くないわ。





…………


ユフィの視線の先にいる傷だらけの男は、ダナンに鋭い眼光を放った後、静かに瞼をおろす。



……ぐ……。


そして少しのうめき声を上げ、腹を押さえてその場に倒れた。



は? なんだ?
なんでアイツが倒れるんだ?





え~っ!?
ダナンさんが蹴られたところ、
押さえてない?
どういう事?


一人でに倒れる傷だらけの男に、周囲は騒然となった。



このダナン様の鋼鉄の腹筋で
衝撃が跳ね返ったんだろうな。





非論理的で閉口するわ。


ダナンのアホな発言に、ユフィは呆れ顔を露骨に見せた。



ん?





に、に……に……





……く。


傷だらけの男が何か言っている事に気付いたハル。立ち上がろうとするその男に無防備に近付き、耳を傾けた。



なるほど~。
そういう事っすね。


それだけ言ったハル。門兵はまだ抜剣しようとする構えを解いていない。



腹減ってるだけっすよ。


ハルの発言に、全員拍子抜けする。そしてハルは傷だらけの男に肩を貸して立ち上がった。



何してんだ?





そりゃあ一緒にメシ食うっすよ。





えー!
本当に言ってるのハル?





何言ってるの!
素性も知れない男よ!
危険だわ。


声を荒げたユフィは、リュウに賛同を求める視線を送る。リュウも敏感にそれに気付き口を開く。



まっ、いいんじゃないのか。


リュウはのんびりとした感じで目を細める。



おもしれー。
ひもじい乞食に恵んでやるのも
悪くないか、ぎゃはははは。


実際に被害に遭ったダナンが笑い飛ばしたのを確認し、門兵は構えを解く。そして厄介事を追い払うように、通行を促した。



あなたのお節介にも
飽きれるわ。





腹減ってる人に
悪い人はいないっすよ。





わけわかんないけど、
それじゃあ全員善人だな。





でもなんとなく
一理ある気がするわ~。


ハルと行動する事になってから、メナも空腹の事が多く、親近感が湧いた。肩を貸すハルに笑顔を送るメナ。そしてこのハラペココンビのお腹の声は、しっかり門兵に聞かれた。
