偽物の体は、その言葉を残して消えた。



さあ、二人とも、ミヤコワスレを渡してもらおうか





桐谷、絶対にミヤコワスレを奪われるんじゃないぞ。奪われれば、帰れなくなる





う、うん…





ははは。だけど滑稽だよ。僕は、いや。正しくはついさっき消された僕だけど。僕はここ最近の君たちの様子をずっと見てたんだよ。もちろん、誰にもバレずに





それは嘘だな。だって、お前の仲間はいないはずだ。僕の友達なら、学校で僕といる時に絶対に気付く。僕の友達じゃなく、例えば偽物だったとしたら、そもそも僕のことは知らない。だから、お前が身を隠す場所がないじゃないか!!





確かに、初めはそうだった。一人で身を隠していたよ。けれど、すぐに仲間が現れた。それからはソイツとともにお前らを見ていたさ





そんな人、いる訳ない





ああ。そんな奴がいる訳ない





何を言っている? 都大樹、お前は知っているだろう。お前たちに存在を知られず、けれど記憶を取り戻した偽物を





そんな人がいたの?





そんなはずは...いや、まさか。綾瀬!?





ああ。綾瀬はお前からミヤコワスレを興味本位で盗んだが、偽物だったから記憶を取り戻しただけで消えてはいない。そしてお前は、勝手に綾瀬が消えたと勘違いしていたな。幸い、綾瀬の家は学校の裏の一番高いマンションにあったからな。実に滑稽だったよ。綾瀬が消えたと安心しきったお前の顔をそこから見るとな





そうだったのか…けどもうそんなことは関係ない! 桐谷、すぐにミヤコワスレで向こうへ戻るぞ!!





あ、ちょっ





遅い!!





大樹、危ない!!





桐谷!? 僕を庇って...おい、桐谷を離せ!!





くくく…





何が可笑しい?





おいおいこいつ。ミヤコワスレを持っていないじゃないか





何故お前が桐谷を?





さあな。理屈は知らないが、何かにぶつかったと思ったら目の前に倒れていた。一度触れれば見えるんじゃないか? あるいは、お前と同じ姿の俺にだからこそかもしれないが





く。なあ桐谷、嘘だよな? ミヤコワスレ、本当は何処かに隠しているんだろ?





・・・





何で…嘘なんか





後悔はよそでやってくれ。まずは、一人目!!





桐谷ーー!





た、大樹…何で?





お前、そんなことしたら自分が帰れなくなるんだぞ?





大樹、何で私なんかに最後の一本を? ああ、駄目。大樹、大樹!?





くそ。それにまだ木五倍子を隠していたとは。まあいい、これでお前はこの世界に一人きりだ。はは、ざまあ…みろ


偽物の体は、その言葉を残して消えた。



もう、お前と会うことは無いさ。じゃあな。それが美樹ちゃんにもらった最後の一本だ





ねえ、大樹。偽物は消せたけど、これじゃ大樹が一人に! ああ、私の体まで、こんな…





ごめん桐谷…でも、これが俺の望みなんだ。だからさ、最後のわがまま聞いてくれよ





嫌だよ。私は、私たちは大樹と一緒にいたいの。誰か一人でもかけちゃだめなの! だから! …大樹?


ぎゅっと。思い切り彼女の体を抱きしめる。戸惑う彼女の顔を見て、しっかりと告げる。



桐谷、いや、シルク。
…大好きだ!!





ずるい。ずるいよ大樹。私だって、私だって大樹のことがずっとだい


そこで、彼女の体は完全に僕の腕の中から消えた。
もう、優しい温かさはここにはない。



シルク…さよなら...


そんな呟きが、僕だけしかいない世界に、小さく、消え入る。
* * * * *
こんにちは。ご覧頂きありがとうございます。
祝☆ストリエ期間延長!!
ということで、今回最終回にしようかなと思ってたのですが、続けることにしました。いかがでしょうか?
まだ読み終わっていない作品が残ってる読者さん、完結しきれていない作品がある作者さん。そんな作者さんたちの為にイラストをアップするイラストレーターさん。後悔のないように最後まで楽しみましょう♪
多分次回こそ最終回です。
それでは、今回はこの辺りで失礼します(*- -)(*_ _)ペコリ

ぽーさん! コメントありがとうございます!!!
実は最後が抜けてて、修正してました(。-∀-)ニヒ♪
ところで、私はcomicoに移るのですが、ぽーさんも移転先が決まっているようですね|´-`)チラッ
お互い楽しんで続けていきましょう...♪*゚