特別席から戻ってきた俺は、控え室には行かず、体育館の外に出た。
空は赤く染まり、オレンジ色に輝く夕日の日差しが眩しく思えた。
特別席から戻ってきた俺は、控え室には行かず、体育館の外に出た。
空は赤く染まり、オレンジ色に輝く夕日の日差しが眩しく思えた。



神裂。


俺を呼んだのは金剛寺だった。



おお、珍しく会長の隣にはいなかったな。
あの一件以来、いつも隣にいるのに。


俺は金剛寺をからかう。
俺にからかわれた金剛寺が眼鏡を手で直す。



昔の俺の話はどうでもいいだろ!
あと、いつも会長の隣にいる訳が無いだろ。
トイレと風呂と寝る時以外だ。





いやいや、お前どんだけ会長のこと好きなんだよ。
あと、トイレ・風呂・寝る時以外が一緒って相当キモいぞ。





キモいとか言うなよ。
最近、影でコソコソ言われていることに気づいてからは、できるだけ距離をとって、双眼鏡で会長を見守るようにしているんだぞ!





いやいや、どう考えてもキモいだろ。
距離を取ってもストーカー行為に走ってる時点でアウトだから。





愛の形は人それぞれだろ?





ストーカー行為を愛の形って言ったら愛の概念がおかしくなるわ!





フンッ、まあ、お前には解らないだろうな。


金剛寺が捨てられた子犬を見るような目で、俺を見て言った。



いやいや、かわいそうなのは俺じゃなくてお前だよ!





ハッハッハー。そういうことにしといてやるよ。


金剛寺は俺の肩を叩いて言った。



はぁ。まあいいや。で?
俺に何の用だったんだ?


俺は金剛寺に聞く。金剛寺も、こん話をしに来たわけではないはずだ。



ああ、会長のことで話があってな。





風宮会長がどうかしたのか?


俺は、金剛寺に聞く。



会長のことを許してやってくれ。


金剛寺がいきなり頭を下げた。



何かと思えば、またその話かよ。


俺は、ため息を一つつく。



前回の事件で救えなかった子供のことだろ?


俺は金剛寺に聞く。



ああ、お前が行けば助かる可能性が有ったのは事実だ。だが、会長はお前を……。


金剛寺が言おうとしていることは解っていた。だから、俺は金剛寺に被せるようにして言った。



だから、その話は昨日の会議で終わっただろ? だから、良いって。


そして俺は、金剛寺に頭を上げるよう言った。



話はそれだけか?


俺は金剛地に聞いた。



あ、ああ。それだけだが……。





じゃあ、俺は体育館に戻るよ。


そう言って、俺は体育館に戻った。
あの時、会長が、俺を止めた理由は分かりきっいた。
あのまま、俺が子供を助けに行っていれば、子供は助けることができたが、俺はどうなるかわからないという状況だったからだ。
より多くの人を助けるためには犠牲も必要になってくる。
それが会長の考えだ。
だが、あの時の子供は俺を見ていた。助けてほしいと目で訴えていた。
会長の拘束魔法で俺は動けなかったが、動こうと思えば動くことはできたかもしれない。助けることはできたかもしれない。
だが、そのときは、その場から動けなかった。
ただ、落ちていく子供を見ることしかできなかった。
だから、俺は会長が許せない。そして、助けられなかった自分が何よりも許せなかった。



同じ後悔は二度としない……。


俺は、拳を握り締め、次の試合に臨む。
