朝
朝



先生





お、橘か。お前はいつも早いな





荷物が少ないからね





橘くんだっけ?
俺はオーナーの神田だ。
三木の元同僚ってところだな。
おっと、初めましてだね。





?





あ、は、初めまして





………





三木、橘くんと話がしたいのだが





お前に男を襲う趣味があったとはな





男同士の話がしたくてな





あの





俺から聞いてもいいかな?





え?





意味がわからないなら、聞き流してくれ。忘れてくれ





?





君にとっては何度目かね? 今年の八月三十日が訪れたのは





………





……すまない。寝言だ





……2回目です





?





オーナーさん、何か知っているのですか?





何も知らないさ。ただ、俺にとっては十回目だ。
毎回状況は変わるけど、最後にはこのホテルは崩壊する。そして、俺も死ぬんだ。
意識を失った俺が目覚めると……八月三十日の朝になっている。この繰り返しだよ。





他のみんなも、そうなのでしょうか





いや、今のところは君と俺だけだろう。誰も違和感を抱いていないだろ





………





この話は他言無用だ。頭がおかしくなったと思われるだけだからな。気分の良いものではない。





……経験したのですね





ああ、全部話したら。橘くんも含めた全員に奇人扱いされてさ……最後には君たち全員に殺されたよ。正確にはホテルごと燃やされたね。





……ごめんなさい





今の君が謝る必要はないさ。その時の君たちは何かに洗脳されたかのように、口々に「殺せ殺せ」って言いながら俺を殺した。
もしかすると、宿泊客の誰かが黒幕かもしれない。そう思って、玄関を開かないようにしたのだよ。そうすれば逃げることは出来ない。
窓が固定されているのは、事故防止の為に以前からやっている。
誰も逃げられない、入れないようになっている。だけど……





結局、今回も亡くなってしまったのですね。





おっと、三木が来たようだ





おい、神田! そろそろ橘を解放してくれないか? 授業が出来ないだろ





そうだな。男の話に付き合ってくれて感謝だ





いえ





ずっと、叫んでいたのに気づかなかったのか





防音システムがしっかりしているからな





お前の部屋って襖かと思ったら鉄製だし。びっくりしたぞ。





ちなみにオートロック。開けるときは指紋認証と顔認証、声認証の三段階を経て開くようになっている。





ハヤト、あのオーナーと何を話していたんだよ





ミステリー小説の話





てっきり、男と男で絡み合っていたのかと





するかよ。
ちょっと部屋に戻るね





あれ、僕の教科書。
こんなラクガキあったか





?





そういえば、彼にもあのメッセージは届いていたのでしょうかね……





……………


“選択肢を間違えるな”
“正しい道を歩けば、夜は明ける”
