今様美少女浦島



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こんばんは、お嬢さん。オレは碧金竜おと子。このサロンを仕切ってる者さ。よろしくな。





初めまして、おと子さん。わたしはたろ子と申します。





たろ子さん、姫様はすごいんスよ! 笑むステとかにしょっちゅう出てるあの『キラかわ☆ロックごっこズ♪』のギターヴォーカルの乙子なんス! ロックごっこの媚びた歌だけじゃなく、昔のロックもすっげえうまいっすし、即興でヤバい曲演ったりしますし、マジパねえんすよ!





そして、アタイらみたいな才能はあるけど収入面がパッとしないアーティストを助けてくれてる。ホント、ありがたいこったね。





ここに来ればいつでもいいシャンパン飲めるしご飯は食えるしで、もう最高~♪





はン。テメエら、お客様の前だとえらい殊勝だなぁ。いつもみたいに傲然と遊べよ。テメェらは、人でも神でもなく、<アート>に仕えてるんだからよ。





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うん? 金に仕える商業ロックスターがめずらしいかい? それともオレの顔になんかついてる?





いいえ。キラかわ☆ロックごっこズ♪の、乙ちゃんのお顔ならテレビなどでよく拝見しております。オフのメイクでも変わらぬ華やかさですわ。





うーん……でも……





何か気になることでもあるのかい?





ええ、ちょっと。
ねえ、おと子さん。あなたもしかして、『災害プリンツェッシン』のヴォーカル、ツヴァイテではございませんこと?





はっ!?
何言ってるんすか! ンな訳ないじゃないっすか! マジで違うッスよ!





カメ子の慌て方だと本当みたいだねえ、はは。そうなら面白いけど、残念ながら違うのさ。





……はは。すごいな……よくわかったなぁ……そうさ。お嬢さんの言う通りだ。





はぁっ!?
ち、ちょっ! 姫様!





わぁ~どうしよう~。この子が倫理機構の調査員だったらここはパア~。私は誰にたかったらいいの~? カメ子のアホがわかりやすい仕込みに引っかかってこんな子を連れてさえ来なければ~





オレは――キラかわロックごっこの乙子は、災害プリンツェッシンのツヴァイテさ。





ああ! やっぱり!





週刊誌にタレ込むなり、芸能倫理向上機構に通報するなりなんなり、好きにするといい、かわいらしくかつ賢いお嬢さん。





そんなこといたしません。私、災プリの曲大好きですもの。本当にすばらしいお声ですわ。おと子さんにそっくりだから、もしかして、と思ったのですの。





そっくり……? 災プリはマスクつけて演奏してるし、声も相当いじってあるから音声解析したってわかるはずが……





そっくりですわ。災プリの曲を聴きながら、わたしが想像していたツヴァイテに。おと子さんはそっくりです。……想像の中の人物に会えるだなんて。この世には♡仲良し♡以外にもすばらしいことがあるのですね……!





マジでパないっすね、たろ子さん……どういう勘の良さッスか……?





いやー……ヤバい感じのする別嬪さんだとは思ったけどね……





けどちょっとまずくない、姫ちゃん? こうやってわかる人にはわかっちゃうなら、いずれ倫理機構にも……





いいさ。……想像した中の人に似てる、なんて理由で逮捕状は出せねえだろ、いくらなんでもさ。それ以外で出るようなら潮時ってこったし、第一、実家の連中が許さねえよ。





そういえば、乙ちゃんは刑部卿のお嬢さんでしたわね……





ちなみに、このお話の舞台はとある律令国家だよ~司法は刑部省が仕切ってるんだ~





そうさ。だからバレたって、逮捕なんかされやしないよ。事故っぽく殺されるだけさ。やっとこさあそこまで家格を上げたんだ、勘当娘のスキャンダルなんか許しゃしないよ――ま、オレの話はいい。





オレが聞きたいのはあんたのことさ、お嬢さん。……とりま、どういう経緯でカメ子を手なずけたんだ?





ふふ。でしたら、まず接吻からさせていただきたいですね、おと子さん♡ そこからたっぷりと……♡ ふふ……♡





いいね、そういうのはオレ好みだ。が、まずは出来事の細かいところを聞きたいのさ。





し、失礼します。あの、姫様、いつものギネスです……それと、た、たろ子さま、スコッチです……





ん?
ああ、置いといてくれ、たづ。





ありがとう、たづ子さん♡





きゃあ♡
スカートめくりぃ♡





ひゃん! し、失礼ひみゃすっ!





ああ♡ 白……!
すばらしいですね……♡





はは、いつもながらかわいいの履いてやがら。





といったくだりの後、
かくかく、しかじか、
と、説明がなされました~☆





……なるほどなぁ。カメ子が世話になったなぁ。ありがとうな、お嬢さん。





本当にありがとうございました……!





いいえ。
お話しました通り、下心からのことですもの♡





ところでお嬢さん、オレだけ秘密を暴かれて、ってのは不公平だよな? お嬢さんも話さないか?





はい?
何のことでしょう?





この街で、スケ番にさえあんな態度とれる身分の方となったら一人しかいない。
だろう、堅司たろ子さん?





……さとい方ですのね、おと子さんは。別に話しても障りはありませんが、変に先入観を持たれても面倒なので黙っておりましたの。





堅司ぁ!?
じゃあ摂家の娘さまでいらっしゃるっつうんスか!?





ふふ。
予想通りの方が予想通りの反応をなさると、笑みを誘うことですね。





堅司の読み方は「かたつかさ」だけど、日本の摂家の一つ鷹司「たかつかさ」家は関係ないよ~参考にとかしてません~ホントだよ~☆





ずいぶんとやんごとなき身分なこった。





あ、じゃあ姫ちゃんより姫ちゃんってこと~? 姫ちゃんも零落かぁ~じゃあ私が成り替わるしかないっぽいね~♪





生まれなどどうでもいいことです。わたしはツヴァイテに、プリンツェッシンたるにふさわしい品位を感じました。わたしよりもはるかに気高い誇りを。
なればこそ、あなたは姫君です、おと子さん。





「生まれなどどうでもいいことです」、ねえ……はは、いいセリフだな。





そんなことが言えんのは、あんたが摂家の生まれだからさ。かわいらしいお姫さま。





ふぅん?
続けていただけるかしら。





続き? そんなのないよ。いいセリフってだけだ、プリンセス。
……癪にさわったなら謝るよ。オレはあんたと喧嘩したくない。





あら。





怒ったように見えましたかしら? だとすればごめんなさいね。内容が気になったもので、ついはしたなく語気を荒げてしまいました。





いや、こっちこそすまない。つい地下人の素が出ちまったね。
災プリのファンの前でくらい、オレはプリンツェッシンでいなきゃならねえのに





わびを入れさせてくれよ。オレは一つ、あんたの言うことを聞くとしよう。何でもだ。





あ。
「何でも」とおっしゃいましたね?





(……これ姫様抱かれにかかってるッスよね……?)





(……だね。まあそうならみんなで♡仲良く♡したらいいよ……)





おう! 何でもだ。言ったからにゃあ、どんなことを言われてもオレは逆らえねえ……プリンツェッシンの誇りにかけてな……何を御所望ですかな、プリンセス?





では、災プリのファーストアルバムを歌ってくださるかしら?





お安い御用だ!





ん?
それだけかい?





ええ。もしかして、何か不都合などおありかしら?





いんや、ないとも。オレはどのペルソナでもロックスターだからな……いつだってロックできるさ……





もしかして、別に頼まれたいことでもあったのかしら?





いいや。そっちはロックの後のお楽しみさ。


♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪



わぁ~すごい演奏だったねえ~





もし音符が並んでるところしか見えなかった人がいたら、立体音響テキストの故障だと思うから、想像力を多めに使ってみてね~☆





すばらしい! すばらしいです!
これがツヴァイテの肉声なのですね……!





いいや、違うね。
これは奇跡さ。プリンツェッシン・ツヴァイテが、まことのプリンセスに会えたがために生まれた一瞬のきらめき。ロックがオレたちを祝福してくれたのさ……!





……ぁ……ふわぁ……あ……





わたしも、あなたに会えてよかったです、おと子さん。





ところで、あの御簾はなんですの?





ん? あの向こうに小部屋があってね、超言語のコミュニケーションで親睦を深めたり、<アート>を結ぶには荒々しすぎるパッションを諫めたりするのさ。





……有体に言えば、♡仲良し♡部屋ということかしら?





ああ。ま、どうやら奴さんは、ふつーに睡眠取ってたっぽいけどな。
――おはよ、ひら子!





……おはよ、姫様☆
ええと、そちらさまは?





堅司たろ子と申します。
呼び方はひら子さん、でよろしいかしら? ともあれ♡仲良し♡になりましょう。





はい☆





あ? おいコラ、起きて来たばかりのやつが何ベッドに行こうとしてやがる。たろ子と♡仲良し♡すんなら、まず――





私からです!
お二人ともずるいですわ、さきにお声がけをいただいたのは私なのに……!





いやっ、ちょ、ちょっと待って欲しいっす! たろ子さん、明日見合いなんすよね? なのにこんな大乱♡仲良し♡なんて――





いいのです。すぐに遊べなくなるのですから、今のうちに大いに遊ばねば。





そもそも、たろ子さんだって昼間はあんなに喜んでいたではありませんか?





あ、いや、それは話が違くないッスかね?





ともかく、いいのです。私のことは私が決めます。





さ、皆さま参りましょうね……♡





その場の皆は、御簾の中へ入って行きました……♡





……ん……ぁ……♡


