五日前
【フレンブルク王国】
現在、このフレンブルク王国には疫病が蔓延している。
死者はざっと二万四千人。
子供から大人まで多くの人間がこの疫病で病死した。
腐敗した死体の山の中でペオル率いる後方支援部隊が現地調査に来ていた。
ひでえ臭いだ…
腐敗した死体に思わずペオルは口を覆う。
隊長!たいちょーう!
どうだ?生存者はいたか?
いえ、やはり全滅でした
そうか…
部下の報告を受けてため息を漏らす。
ハァ、気がのらねえな
隊長準備が整いました!
部下達が村人全ての死体を積み上げ終わり隊長の号令を待っていた。
これで全部か?
はい!
そうか、じゃあちゃっちゃと始めて、さっさと帰ろう
火をつけろ!
副官の合図で部下達が死体の山に火をつけた。
人間の脂やリンが燃えて一気に炎が拡がる。
ぺオルの部隊の任務は死体の焼却にあたっていた。
これ以上疫病を拡散させないためである。
疫病を拡めないためだと思っても、人を焼くのは嫌ですね
副官のミディアンは、隣で言った。
ペオルはパチパチと燃えてく死体を見ながら黙っている。
来る日も来る日も死体処理、こんなことしても気休めにしかならないってのによ。この疫病の拡散は感染者の死体焼いた程度じゃ止められない。
無駄なことさせやがってほんと、めんどくせえ...
ペオルは目の前の光景を見ながらそう思っていた。
その時、ペオルは何かに気づいて炎をまじまじ見た。
ん?
おい、今死体の山で何か動かなかったか?
そんなまさか
やっぱ動いた!
ペオルは走り燃え上がる死体の山を漁った。
た、隊長あぶないですよ!?
部下の制止も聞かないで、ペオルは火を恐れずに懸命に探した。
あちいな! くそったれが!
ペオルは腕を引っ張りあげる。
それは炭で全身を真っ黒に被った子供だった。
微かだが息をしている。
生存者だ…生存者がいたぞ!!!
その日、ペオル後方支援隊の成果は一人だけの生存者救出だった。
四日前
【フレンブルク支部 聖教会騎士団詰所】
失礼しまーす隊長、ってうお!?
キャア!?
ミディアンがペオルを起こしに隊長部屋のドアを開けると、中には全裸の女性がいた。
ミディアンを見て驚いた女は自分の服をさっさと拾って逃げるように部屋から出ていった。
はぁ、またですか・・・
ミディアンは呆れながらベッドのほうを遠い目で見てる。そこには全裸でベロンベロンになったペオルが爆睡していた。
隊長起きてください。もう昼ですよ…って酒くさっ!
んあ~あとちょっと
何があとちょっとですか。早く起きてください。
ミディアンはいつものようにペオルの身体を結構強めで揺さぶる。ペオルはその起こされ方が嫌いで、仕方なしに起きる。
揺らすな…二日酔いで頭がいてえんだ…
頭が痛いのはこっちですよ。教会の宿舎に情婦連れ込まないでくださいよ。
あれシンリーちゃんは?
先程そそくさと帰りましたよ
帰っちゃったの!? はぁ、朝一発ヌいてくれりゃあ最高だったのに帰しやがって
それは気づかず大変申し訳ございませんでした。あとさっさとパンツ履いてください。
取って
嫌ですよ汚い。自分で取ってください
ペオルは起き上がりパンツを取ると渋々パンツを履いた。
そうそう、この前隊長が助けた子供の意識が戻ったそうですよ
へぇ~
というわけで、ちょっと様子を見に行ってください。
はあ? なんで
彼が唯一の生存者なんです。もしかしたら疫病の原因がわかるかもしれません
やだよ、俺ガキ嫌いだもん。他の奴に任せる
みんな隊長の指示で各地に出払っていて、今は隊長しか暇な人がいません
じゃあお前行ってこいよ
いいですよ。その代わりに隊長がやるはずのこの書類の山を全部やってくれるのであれば喜んで
ミディアンは山積みの書類をペオルの目の前にドサッと置いた。
はい! ミディアン君! 喜んで生存者の見舞いに行ってまいります!
ペオルは逃げるように飛び出した。
ったく、めんどくせえなぁ~
と思いながら、ペオルは子供が入院している治療所に向かった。