動物園からはそんなに離れていないと思うが、雰囲気が少し違っている。
不思議な建物は鬱蒼とした木々に囲まれ、周囲は薄暗く少し不安になった。
動物園からはそんなに離れていないと思うが、雰囲気が少し違っている。
不思議な建物は鬱蒼とした木々に囲まれ、周囲は薄暗く少し不安になった。



行こう……


三之丈さんに促され、私はその怪しげな場所へと入った。
扉を開け中へ入ると──
フワっと良い香りが鼻を掠める。



わぁっ……


そして、色鮮やかな草花が咲き乱れていた。



ココは……?





植物園……


見回してみると、全く知らない花や見た事のある花も幾つかある。



コンニチワ~☆
神世植物園にようこそ~


フヨフヨと小さな生き物が飛んで来た。
よ~く目を凝らしてみると、そこにいたのは小さな妖精だった。



蚊だ……





さ、三之丈さん!





ち、違います! 失礼な!
ワタシはこの神世植物園のナビゲーター、ピクシーのピスケスと申しま~す☆





蚊……





三之丈さん……





違います! 妖精です!
さぁ、それではご案内しますね~


私たちはピスケスさんの後をついて、植物園の中を歩いていった。



こちらは、色とりどりの美しい花たちのコーナーでございま~す





わぁ……


目の前に広がるのは、本当に綺麗な花畑だった。
赤や青、白、黄色様々な色の自然が造るグラデーションは、まるで夢の中にいるみたい。



次は、不思議な花たちのコーナーでございます


明るかった花畑から突然、真っ暗な場所へと案内される。
花なんてどこにあるんだろう?
私がそう思っていると──
辺りに、一つポワっと光が灯る。
やがて、その光が二つ、三つと増えていく。
そして……
その光が何百、何千と増え、辺りは光に埋め尽くされていった。



星光花(セイコウカ)でございます、暗い場所で発光する花にございます☆





綺麗……





……昔、里沙にこの花をあげた事がある





えっ……そうなんですか?





里沙が、星を採りたいっていって……
夜、二人でいつも遊んでる近所の公園に行った……





小さい頃に星を採りたいって言ってた事は覚えています……





公園の一番高いジャングルジムのてっぺんに昇って、手を伸ばしたけど……取れなかった……





そんな事があったんですね





だから……この花を取って来てあげたんだけど……
光らなかった。
神世の花だから人間の世界では光らない……





…………花……


確かに、昔見た事ない綺麗な花を誰かから貰った覚えがある。
栞にしようと思っていたら、いつの間にか花が消えていた……。



それでは次は季節の花のコーナーです


そして
開かれた扉の向こうには──
一面の桜並木が続いていた。



桜……





うん……
里沙と僕たちが初めて会った時も咲いていた……





初めて会った……





あの神社の満開の桜の中で……
僕たちは出会った……


その時──
私の頭の中に、覚えているはずのない、いつかの遠い記憶が流れ出した。



里沙……ゴメン





いいよ~
ジャングルジムじゃ届かなかったね~





……そうだ!





危ないよ~下りなよ~


大きな桜の木、昇っているのは──



ここからなら届くかもしれない……





うっ……
ケガしちゃうよ~





もう少……しっ……あっ!





キャア!!


桜の木から落ちた少年。
幸い足を擦りむいただけで済んだけど……。



大丈夫!?





痛い……





こ、これ、バンソウコウ使って





平気……





ダメ~っ!
もう、ほんとに心配したんだよ~





ゴメン……





ううん、良かった死んじゃうかと思ったよ……





ゴメン……星も採れなくて……
ゴメン





いいの


私……
私、そうだ、あの時、確かに男の子と……。
アレはあの時の男の子は、三之丈さん!?



里沙……?





あっ、あの、私、少し思い出して……


悲鳴!?
声の方を見ると……
植物の怪物が物凄い勢いで迫って来ていた。
ピスケスさんが襲われそうになっている。



早く逃げて下さい!!





ピスケスさん!!


私が叫ぶよりも早く、三之丈さんが暴れるモンスターの方に向かい対峙している。



三之丈さん……!?





里沙は離れてて……





……グルルルル





…………


怪物の動きが止まった。



…………ダメ





グ……ルル





だ~めっ!





…………グルっ


凄い!
目力だけで怪物が大人しくなった!!



よし……





クルルルル~♪


なんか、懐いている……
三之丈さんって動物だけでなく、植物とも意志疎通が出来るのかな?
んっ……?
でもあれって、植物? 動物?



三之丈さ……


私が、声を掛けようとした時だった──
ふいに、後ろに人の気配を感じて振り向くと……。



ふはははははっ……
つかまえたぞ!


いきなり後ろから知らない男の人に羽交い締めにされてしまったのだ。



里沙……!





三之丈さん!!





ゴメンネ~こんな手荒なマネして~


この人!?
あの時の……



ふんっ!
女などとらえずとも、オレは勝つ……


この人もこの前図書館で会った人だ!



いいんだよ~!
オレはこういうのを一回やってみたかったの~!





あっ、アナタたち一体誰なんですか!?
なんでこんな事をするんですか!?





はっ! オレ達か?
オレ達はな~、泣く子も黙る七福神様だよ!





し、七福神?
ってあの宝船に描かれている……?





そうとも、オレ様は布袋(ほてい)





大黒(だいこく)……





恵比寿だよ~





アホ・バカ・クソ……の三人トリオ





おいっこら!
てめ~っ!!





あはは~、当たっていなくはないかもね~





クソはメガネ野郎の方だ……三之丈





ともかく女は頂いていくぞ!?
狐の!





ちょっと!
離して下さいっ!!





君は少し静かにしていてね~





……あっ…………


なんで?
急にスゴイ眠気が……



里沙!!


三之丈さんの声が遠くに聞こえた。
