くるくるとまた舞うシャーペン。私達はアキス先生が青汁を補給した後彼が座っていたテーブルの方へとおもむき席に座る。
くるくるとまた舞うシャーペン。私達はアキス先生が青汁を補給した後彼が座っていたテーブルの方へとおもむき席に座る。



それで、何かわかっているんですか?





いえ、今のところは何も。ですのでいろいろと考えていきましょう





考えるたって……、本人もいないのにわかるものですかね





殺人事件で被害者に直接話を聞けるのは稀ですよ





確かに、そうですけど


殺していなければ殺人未遂だし。
くるりんとシャープペンシルを大きく回し始める。まだ思考を立てているところなのだろうか。



うーん……。でも6時と7時じゃ間違えそうにもなさそうですよね


フレイスは6時と確認したと言っていたことから1時間遅いと考えると7時を本当はさしていたという可能性。
フレイスの言っていた通り時間を純粋に間違えたというのには少し違和感を感じる。いくら焦っていたとしても分を間違えるならともかく長針を間違えるということはなさそうだし。



なるほど。では、アリスさんは時計と言えばどのようなものだと思いますか?





時計、ですか?まあ、丸かったり四角かったり……。短針、長針、秒針があってという感じですかね


ちなみになになにですか?はアキス先生の描くミステリ、『クローバー』の主人公の口癖だ。まさかこれがアキス先生自身の口癖だったとは。



そうですね……。ちなみにアリスさんは音楽をよく聞きますか?





音楽ですか?うーん……、あんまり聞きませんね


正直流行りの曲だと言われてもあまりわからない。そもそも調べようとしていないというのもあるのだけど。



でしたら、アリスさんのご友人は音楽をきいていたんですよね?何で音楽を聴いていたかわかりますか?





えっと……、次の曲とかいってたんで恐らくミュージックプレイヤーだと思いますけど





エリスマジック社のミュージックプレイヤー……。形は?





青くて丸かったです。手のひら大のサイズで





なるほど。でしたらミュージックプレイヤー4Xと思われますね





便利ですよね、先生の魔法。アーカイブスは





それほどでも


アーカイブス。それは世の中の情報を検索する魔法。そのため自分の知らないことでもすぐさま検索し調べることができる。もちろん、前提として調べようと思えば調べられるラインで合法的なものに限る。だからプライベートなことや国家機密、なんて調べられないけど。
先の事件でドリンクバーについて詳しく知っていたのもこの魔法のおかげだ。



なるほど。だとするならば時間を間違えそうにもない、ということも無さそうですね





えっ?どうして





今回は簡単でした。ご友人がミュージックプレイヤー4Xを持っておられたということがかなり大きかったです


最後にまた大きくシャーペンを回してからその回転を止めて前に突き出す。



このミステリー。全て書けました


満足そうに頷く。なにが書けたというのか。



さて、真実を導くためには間違いを消していくことの方がいいです





間違い?魔法によるトリックとかですか?





はい。今回の件でいえばイタズラにしても被害を逢うのはご友人のご友人となりますし誰もとくしません。さらには時間を操る魔法はかなり高度で大掛かりなものと聞きます





らしいですね





では続いてご友人の足がまるでカメのごとく遅いという線


カメ云々の事も聞いていたんだ、アキス先生。二重に話をするのも面倒だったので嬉しいことだけど。



こちらもどんなに遅かったとしても流石に一時間もかからないでしょうし


そしてテーブルに広げていたノートパソコンを弄る。



もし、私の憶測が正しければこれを見ればアリスさんもわかるかと思います





なんですか?





この時計をご覧ください。針などありませんよ





あっ、そっか。デジタル時計というものが





はい。そして今の時刻は?何時、までで結構ですので





えっ?3時、ですけど





いえ、そうではなくて、そのまま読んでください





そのまま?15時……。あっ





その通り。ご友人も恐らく24時間表記のデジタル時計を見たんだと思います。そうするならご友人の言い方にも納得します。7時と17という数字をみた、なんて





7時、つまり19時と18時ではデジタル数字では線が一本あるかないか。寝起きでぼんやりとしていたことも考えて間違えてもおかしくはなさそうです


うん、たしかに。あとは光の加減とかで線が一本見えなくなっていたりとかはよくあることだし。



なるほど……。でも、フレイスがデジタル時計を見たという証拠は?





それもご友人の言葉から憶測できます。時間を確認したという表現を使っており時計を見たとは一言も言ってないんです。さらにいえば焦っていたのなら、一番手元にある時計を確認するはず。ミュージックプレイヤー4Xにはデジタル表記の時計が必ず1番上に表示されるんです





そっか……。あれ?でも待ってください。フレイスは曲が一つしか移っていないと言ってましたよ?


そうだ。これがあるから時間の線もなさそうだと思っていた。1時間もある曲を聴いていたとは思えないし。



ご友人おっしゃられていましたよね


意地の悪そうな笑顔を見せる。なんか楽しそうだ。



お任せ選曲にしていたと。ということは、次に何の曲が来るかは予想できないはずです。ですが、ミュージックプレイヤー4Xは左下に全何曲中の現在何曲目というのが表わされているんです





まあ、そうなるでしょうけど……


だからどうしたとも思える。それが全何曲中の先ほどまで聞いていた曲数プラス1曲になっていただけでは。



リピート機能ですよ。ですので曲数がリセットされていたんです。お任せ選曲ならば全楽曲数が1時間ほどになっている可能性もありますし





そっか。ちょっと確認してみます


私はポケットから携帯を取り出し電話をかける。その時スピーカーにもする。



もしもし?どうしたの?





フレイスが言っていた謎が解けそうなんです。ですので、確認。フレイスは起きたときなにで時間確認したんですか?





えっ?ミュージックプレイヤーだけど





機種は?





4X





……はぁ。やっぱり。わかりました。詳しくは後でお知らせします





そう?ありがとう


ピッと携帯を切る。



やはり、仮説は本説となりました





結局はフレイスが時間を勘違いしていたのと偶然が少し重なったというあたりですね





はい、そのようです。全ての謎が書けました


アキス先生は満足げに頷く。
カランコロン
来店を知らせる音が聞こえる。



すみません、お客様がきましたので





あぁ。では、私も仕事に戻るとします


アキス先生に頭を一つ下げてからパタパタと向かう。そこにいたのは細身の女性。



いらっしゃい





あっ、すみません。ここに男性の一人客が……って、あっ!


大きな声を上げる。



ごめんなさい!アキス先生!やっぱりここにいたんですか!?


私を押しのけてからその女性はアキス先生の前まで行く。



えっ、なっ……。ティーチ、さん





お、お客様?


勝手に入られて騒がれたのでは店の雰囲気が悪くなってしまう。というか、アキス先生の知り合い?



すみません。私、アキス先生の担当編集をしているティーチと申します。そろそろ〆切というのに進行状況について問い合わせても返事がなかったので





あ、あはは……


根つめるのでフリータイムでと言ってたけどそういうことだったのか。



きちんとここで仕事してたんですよ。家より執筆がはかどるんで





えっ?でも先ほどまでナゾトキをやっ―――





アリスさん!





謎解き……。へー


視線の温度がどんどん下がっていく。



わかりました。アキス先生が書き終わるまで待たせていただきます。すみません、私も追加で





あ、はは。わかりました。ドリンクバーですので、ご自由にどうぞ


私は小さく笑って認める。



アリスさんも……わざわざ言わなくても





クローバーシリーズ。楽しみに待ってますんで





確信犯、でしたか





そんな、偶然ですよ


私はアキス先生がしたように偶然を装って笑ってみせる。
がっくりと頭を垂れて、編集というティーチ氏に促されるまま執筆活動をアキス先生は再開した。
