色々な世界は複雑に絡まりあってるくせにそれぞれが独立しなりあっている。本はそんな独立した世界をページをめくるだけで見してくれる。
色々な世界は複雑に絡まりあってるくせにそれぞれが独立しなりあっている。本はそんな独立した世界をページをめくるだけで見してくれる。
カランコロン
ドアの開閉に従って私の元に鈴の音色がダイレクトに届く。少し高かったが客が入ったことを確認するために魔法道具を買って正解だった。静かに本を読みたいという人の邪魔にならないように普通の鈴はつけれなかったし。



いらっしゃい


私―――アリスは読んでいた本から顔を上げて声をかける。そこにいたのは、長身の男だった。



一時間ほど





かしこまりました。どうぞ、こちらへ


その常連の男性を案内する。名前は知らないけど週に一度は『クレフ』へと足を運ぶお得意様だ。



ドリンクバーとなっておりますので、お好きな時間にどうぞお飲みください


といっても、そんなのわかりきっているんだろうけど、一応決まりとして伝えておく。男が頷くのを見てから私は机の合間、本棚の合間を縫いで定位置へと戻る。
ここ、『クレフ』は私が経営しているカフェと図書館の混合したお店。飲み物はドリンクバー形式で本も自由に読むことができる。料金は時間制。
当初は繁盛しないと止められもしたが、今では十二分に収入を得て安定した生活ができるようになっている。私としても、こうして見ず知らずの土地でも本という媒体の元で好きなように暮らせれるならいいものだ。ネットカフェをちょっと弄っただけにもかかわらず。
ピロリン
その時、私の耳に機械音がなる。この音は第二ドリンクバーの方からの呼び出し音。どうしたんだろうか。
私は本にクローバーの栞を挟んでその場へと急ぐ。



おまたせしました


そこにいたのは、当たり前のように常連の男性。だって、今の客は彼だけなのだから。



どうかされましたか?





いや、このドリンクが出なくて


低くしっかりした声で男は言う。常連客だし、まさかドリンクバーの出し方を知らないわけではあるまい。ということは……ドリンクバーの不調か?



失礼いたしました。少々お待ちください


私は頭を下げてとりあえずグラスをもってボタンを押す。ドリンクは出ない。今朝入れたばかりなので空になっているはずもないのだが……。



あれ?





どうしました?





あっ、いえ。もう空っぽになっていたんだと少し驚いてしまいまして


機械を開けて確認したらもうドリンクが無くなっていた。それには非常に驚きだった。現在午後2時。先ほどまでいた巨漢の男が全部飲み干したとでもいうのだろうか……、青汁を。だとするならばなんと健康的なデブだ。



珍しいですね





え、えぇ。こんなこともあるんですね。申し訳ありませんが、今からドリンクの入れ替えをいたしますので、あちらのドリンクバーの方で飲んでいただければ


私は謝りつつ別のドリンクバーへと誘導をする。そもそも私を呼び出さなくても別の場所に行けばいいはずなのに、わざわざ私に教えもらったんだ。いいクレームと悪いクレームの、いい方だ。悪質クレームを放つお客『様』はうちの店に来なくていい。



わかりました


常連の男は頭を下げて立ち去る。ここからは少し一苦労だ。魔法をもっと簡単に使えれば苦労もしないのに扱える魔法系統が炎なんて、何の役にも立たない。立つのは震災時ぐらいだろうか。それとも、お客『様』を燃やす時ぐらいだろうか。そんなことをしたら犯罪なんだけど。
他のドリンクも確認する。減っているなら今のうちに軽く補充しても。



えっ……?


思わず固まる。全てのドリンク容器が空っぽになっていた。そんなばかな、あのデブが全部?



はぁ……


私は大きくため息を吐いてどうしようかと考える。裏にストックはあるけど、これを全部運び出すとなるとかなりの労力を割かざる得ない。急ピッチでやるしかないのは本当に面倒としか言いようがなかった。



あの





えっ?あっ、はい





あっちのドリンクバーも全て空っぽだったんですけど





えっ、えぇ!?


両方とも!?どんなサイクルで飲んだとしてもそんなことはできないはず。



まさか





いえ、本当に……。今日は、いれてなかったんですか?





そんなはずは。今朝、きちんと確認しましたし……。まさか全部飲まれた……


だとするならあの脂肪は全部ジュースということ?
どんな超人、それ?



申し訳ありません。すぐに一杯分ご用意いたします


私は頭を下げてグラスを受け取る。そして後ろを振り向くと。



あれ?なんで……


開きっぱなしだったドリンクバーの機械。そこにはそれぞれのジュースの容器が入ってあった。
慌ててグラスを飲み物の注ぎ口におき青汁を入れてみる。何の問題もなく丁度一杯分注がれる。



……おかしいですね





はい。機械に異常をきたしてないことを見るにドリンク事態になんの問題もなさそうですし……


私はその自分で注いだグラスに口をつける。確かな青汁の……。うっ。



あっ、大丈夫ですか?





確かに、青汁です


苦味をこらえるように下唇を噛む。どうも苦手だ。



それにしてもこの事件……。非常に興味が踊りますね





えっ?





少し、考えてみませんか?


男は小さく笑うとどこから取り出したのか、シャープペンシルをくるくると右手で回し始めた。
