視界のほとんど閉ざされた中、アノ女の声がした。

えっ……!?

辺りを見回すが


女の姿は見当たら無い。

死出ノ国ヘノ……行キカタ……ハ……

再び、女の声がした。


はっきりと……





まるですぐ後ろにでもいるかのように、アノ女の声が聞こえた。

いっ、いや

ヤダっ!!

サキは、一心不乱に走り出す。

すると次の瞬間、目の前には突然鉄の扉が現れた。

なっ……なによ……コレ……

そして、それはゆっくりゆっくりとサキの目の前で開いて行く。

鉄の……扉が………

なんでっ……!?

気が付けば、いつの間にかサキはホームドアの開いたホームの端に立っていた。

まもなく、3番線には特急電車が──

サキの体は、まるで金縛りにあったように動かない。

なん……でっ……!?

動かない体、唯一動かせるのは視線。



ふと、サキがホームの下を見ると黒い影のようなものがうずくまっていた。

ナ……ニっ……?

死デノクニ……へノ……

イキカタハ……

女だ!

ホームにはうずくまる女がいた!

……………死デ……ノクニヘノ……

イキカタは………

いっ、いや……

女は立ち上がり、サキの腕を掴む。




そして──

そのまま、サキの体はホームへと引っ張られた。

ヤメ……てっ……!!

プァァァァァ───────ンっ!!



………………ココガ……オマエノ

シデノクニダヨ……

女は醜く笑う。



サキの体がホームから下に落ちる瞬間、眩しい光が見えた。

鼓膜を裂く様な音が響き渡る。
それは、こちらへ来る電車のライトだった。

特急電車の急ブレーキの音と凄まじい金属のこすれる音。

…………っ

…………今のは……!?

霧斗さんは頭痛がするのか眉間に皺を寄せ、体をふらつかせながら壁に寄りかかると頭を押さえた。

あっ、アノ女が……

絵莉は怯えてその場にしゃがみこむ。

大丈夫ですか?

ああ、平気だよ……
少し頭が痛むだけだから

あの……今のって……?

……妹の死んだ時の記憶みたいなもの……

とても不思議な感覚だった。



頭の中で無理に映画を観させられているような……。

強い感情は残りやすい……

僕はそれを自分の中で映像化出来る。
こうして人に見せたのは妹と君たちだけだけど……

じゃあ……今のは……

妹の本当の死の原因は……
おそらく……アノ女だろう

夢に出て来た女。
アノ女が全ての原因ということだろうか?
でも、アノ女は夢の中の存在なのでは?



その時、ホームに電車が入って来た。

その振動が私の不安を一層掻き立てた……。