「さよーならー」
号令の係の号令に合わせ、教室の生徒たちはそう言うと
荷物を持って教室の外へと歩いていく。

そんな中、一人の男子生徒は他の生徒が教室を出ていくのを座ったままで待っていた。ひどく気だるげなその男子生徒は、大きく一つあくびをした。

駅前。
夕方で帰宅する人も増えてきた駅は、そこそこ多くの人が行きかう場所になっている。

その人々に紛れて隼士は姿を見せる。この駅から歩いて十分ほどの距離に彼の家はある。
早く帰ろう―――と、隼士は少しだけ歩を速めた。

そう、母の言うとおり隼士は今年十五歳……高校受験の年だ。隼士は成績は上位の方で母からも大分期待されているようだが、本人はそれがちょっとばかりプレッシャーだったりする。

本人は勉強なんてしたくもないというのが本音らしい。

だがまぁ彼も自覚がないわけではないので、いつもそれとなく勉強はしているようだ。

今日もまた、彼は「面倒だ」と言いながら勉強することだろう。

―――夜。
既に夕飯や風呂、勉強を終えた隼士は、部屋の電気を消してベッドにもぐりこんでいた。

何となくそんなことを考えて、隼士はそのまま眠気に身を任せて意識を闇に落としていった。