一言でいえば荘厳。一人の若者が玉座の間で王女に謁見していた。
 いくら手を伸ばしても届きそうにない天井に、一流の職人が手掛けたであろうステンドグラス。
 兵士達は剣を掲げ、不動の姿勢を取っている。

「配達屋ユウ社のユーノ=シャインと言ったか。喜べ、そなたに仕事をやろう」

 豪華な室内にも負けないほど、煌びやかな衣装に身を包んだ部屋の主が話す。

…………

 対してユーと呼ばれた若者は無言のまま跪いている。
 ただ身じろぎした拍子で、首からぶら下げた○と×の形をした二つのアクセサリーがキンと音を僅かに鳴らす。

 王座にいる貴人は羊皮紙を両手に持ちながら口上を述べ始める。

んん! えー、では今から妾からの命令を下すぞ、心して聞くように。貴殿、配達屋ユウ社のゆぇう…………ええいッ、この口上は長くて面倒じゃ! ユーシャでいいじゃろ! 

ですから噛まないように練習するようにとあれほど言ったのに……

か、噛んどらんッ! それりぇより大臣!

はっ!(また噛んだ)

例の物を配達屋に渡すのだ

はい。しかし本当に良いのですか? 一介の配達屋にこのような大役を……。

奴の父はかつて勇者と称されたほどこの国随一の兵士であったのだ。現在の職なぞ関係ない。はよ渡せい。

……判りました

では配達屋ユーノ=シャイン殿。これを受け取るように。

…………?

 見た目より軽いそれを渡されたユウは小首を傾げる。
 大臣がユウに渡したのは一言でいえば木の棒だった。
 ツルツルした表面から加工されていることは判る。
 良質な木材を使っているのだろう、丈夫で長持ちしそうな一品だ。
 そして美しい部屋の主は告げた。

その棒を魔王の元まで持っていき、そして奴をシバいてこい!

 その言葉に若者はニッコリと笑う。
 おもむろに胸元からぶら下げたアクセサリーの内、バッテンの方を掲げると、








……×(いいえ)


 まるで女神のように穏やかな笑顔で命令を拒絶したのだった――――

配達屋ユーシャ

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