男性を好きになる事を封印した俺。
とはいえ、本性をそう簡単に変えれらるわけもなく、オカズはもっぱら男性だった。
会社の女性にも全く興味が湧かず、同僚が飲み会の後にナンパしているのを横目に、俺にはそんな勇気も無いし、そもそも女性に興味が無いのだから、何もする気が起きず独身貴族を謳歌してた。謳歌といえば聞こえがいいけど、女性に興味はない、かといって男性も封印という八方塞がりの状態で悶々としてただけ。
そんななか、いつまでも結婚しようとしない俺を見かねて、両親がお見合いの話を持ち込むようになってきた。性的指向の事もあり乗り気ではなかったけど、親を心配させたくないという気持ちはあったので、5回ぐらいお見合いしたかな。中には意気投合し結婚しても良いかなという女性もいたけど、女性側の親が関東に嫁を出したくないという訳の分からない理由で断ってきてボツになった。親に頼らず自分でもなんとかしなきゃと思って積極的に合コンにも参加するようなった。
何回か合コンに参加しているうちに、気の合う女性に巡り合い付き合う事になった。不思議なもので、いざ気の合う女性に巡り合ったら男性の事は忘れられる気がして「俺はついにノーマルになったぞ!」と思ったものだ。何ヶ月か付き合った後、彼女と初エッチをする事になるのだが、なんせ初体験は男性だったから女性と上手くやれる自信は無いし、そもそも女性の体を見て勃つかどうか不安だし、男性との初体験の時以上に緊張してしまってガチガチなった事を覚えてる。
でもキスをしているうちにちゃんと勃ったんだよね。
あれ大丈夫じゃん。やっぱ俺ってキスが好きなのかな。キスすれば男性でも女性でも勃つのかなって感じで、すんなり女性との初体験はクリアできてしまった。この頃から俺はバイセクシャルなのかもって考えるようになったのかもしれない。
ただ残念ながら、その彼女とは長続きしなかった。別れた理由は簡単に言ってしまうと性格の不一致。別れる時に言われた言葉は今でも覚えてる。「なお君、優しすぎるのよ」だった。童貞君が初めて付き合う女性だし、性的指向の事で後ろめたい気持ちもあるし、なんでも言う事を聞いてたような気はするけど、彼女的にはそれは嫌だったみたい。叱るときは叱ってほしい的な。当時はそんな女性の気持ちは全然理解出来なかった。短い間ではあったけど、初めて本気で人を好きになって、楽しいことや嬉しいことも経験して、そして初めての別れは死ぬほど泣いて、本当に素晴らしい経験だった。今でも彼女には感謝している。
彼女と別れた後、しばらく失意の日々を送っていたが、どうもその時期はモテ期だったようで、それから何人かの女性と付き合う事になった。場数を踏めば女性とのセックスにもすっかり自信がついて、これなら結婚もできそうだと思い始めた矢先に、後に妻となる女性に巡りあった。