男性に目覚めたといっても、心の中では女性を好きにならなきゃいけないんだって強迫観念もあって、男性を好きになるって気持ちを押し殺していた。当時はまだ LGBTQ なんて言葉はなく、性的マイノリティに対する世間の認識は酷いもので、ホモって言葉であからさまに差別するような事がまかり通ってた時代だ。そんな時代に男性と付き合うって事は、俺の中ではハードルが高すぎたし、親を悲しませたくないって気持ちもあって、女性を好きにならなきゃと必死に自分に言い聞かせてた。この強迫観念は後々長い間俺を苦しめる事になるのだけれども。



強迫観念からとはいえ早く彼女を見つけるためには、少しでもモテる要素がないとダメだと思って、当時流行ってた漫画「バリバリ伝説」に感化された事もあり、頑張って自動二輪(但し中型限定)を取得し頻繁にツーリングに行ってた。そんな時、女性にモテるバイク友達が一人の女性を紹介してくれて、男3人、女3人、タンデムでツーリングに行った。タンデムした事がある人は分かると思うけど、あれって背中が凄く気持ちいいんだよね。特に胸の大きい子だと。それはそれで嬉しかったけど(胸が当たるのが嬉しかったって意味ではなく)、残念ながら相手は俺の事をあまり気に入ってくれなかったし、俺の方もいまいち興味が湧かず、この先女性を好きになる事が出来るのだろうかと不安になった。



結局、それから社会人になるまで強迫観念に苛まれ続け、男女ともにお付き合いする相手はいなかった。本当に勿体無い事をしたなと思う。学生時代にしか経験できない事って沢山あるのに。



時代背景のせいにするのは卑怯だと思うけど、世間がもっと性的マイノリティに理解があったら素直に男性にアプローチしていたと思うし、今みたいに手軽に出会いができるネットやアプリがあったら、モテない俺でも、ひょっとしたら良い出会いがあったかもしれないって思ったりもする。ま、所詮は言い訳か。



最近、「学生時代に沢山恋をしたかったなぁと」と切なくなることが多いのは、年をとった証拠なんだろうね。そういう思いが強くなったのは、実はある最近の出来事からなんだけど、それは別の記事にします。